折々の雑文 第25回

増 殖

折々の雑文 #25

 奴らは増殖する。
 男子は中学生になると、奴らと戦うこととなるのだ。

 奴らは増殖する。静かに。しかし、確実に。そして放っておくと、奴らの増殖は宿主に確実な破滅をもたらすのだ。

 破滅とは、即ち、親のガサ入れである。
 ウチの場合、学校から帰宅したら、おかんが東京地検特捜部かCIAのエージェントのように冷酷に、証拠物品のすべてを押収された後だった。プライバシーや自由権の尊重など何の意味も持たない。その上、「こんなにたくさん!」「こんなもの集める暇があったら、勉強しろ」とか言われ説教までされた。そして僕は、土下座して「もう二度としません」と泣きながら謝った。僕は一生忘れません。

 それでも増殖するのが男子中学生の哀しいサガである。当時の僕は、何故か、北沢拓也のオヤジ的妄想の詰まった小説にハマり、文庫本を何冊か買ったりして、また増殖が始まるのだ。

 そして、結局特捜部のガサ入れ。また泣きながら謝罪する。それでもまた、集める。イタチゴッコである。それを何回か繰り返していると、もうおかんもなにも言わなくなる。黙認だ。民衆が勝利したのだ。違うか。僕は、革命で多くの血が流れる理由を肌で感じ取った。そして、それまでに捨てられた奴らに黙祷した。真性の馬鹿です。もはや、奴らの洗脳は完了したのだ。

 そうなると、奴らは増殖するのみである。さすがに処分を考えねばならない。奴らは増えすぎた。しかしどうやって捨てよう。奴らは核廃棄物の如く、処分が困難なシロモノである。

 えいやっと捨てても、また買い集める。結局あまり減らない。
 少し前の事だが、僕はブレイクする少し前の優香のグラビアが載っているというだけで奴らの一部をヤフーオークションに出品させ、それを1200円ほどに落札させるような悪行をしでかした。買う方も買う方だが。処分のしかたとしてヤフーオークションまで使っていたら、面倒で仕方ない。不法投棄は、「黒河さんち息子さん、あんなところにエロ本捨てて」から生ず未曾有の危機を否定できない。

 現在も少し、いやかなりの量の奴らがベッドの下に潜んでいる。それでも、増殖は止らず、デスクの引き出しまで……。奴らの増殖は止まらない。

 僕の全くの専門外であるが、ヤヲイ本蒐集家たちには「積み荷を燃やして」という隠語が伝わっている(らしい)。宮崎駿御大の名作『風の谷のナウシカ』での少女のセリフからが元ネタであるが、「私が事故とかで突然死んだら、私のウチにあるヤヲイ本を親に見られる前に始末して」という意味である。言い得て妙ではないか。確かに自分の死後に、あれらを処分する遺族の気持ちを察するに余りある。リストラが最重要課題だ。

 あともう少しで、奴らに押しつぶされる夢を見るかもしれない。増殖したオレンジ通信、デラべっぴん、櫻木充『隣のお姉さん少年狩り』(フランス書院文庫)などに押しつぶされ圧死する二十歳の大学生。一番嫌な死に方だ。早いうちに奴らと闘争を開始せねば。

 全く危険なシロモノである、エロ本と言うやつは。

(2001/2/11)

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