折々の雑文 第29回

ほのぼの童話大作戦

折々の雑文 #29

 図書館で、注目すべきパンフレットを見つけた。『ほのぼの童話館・第19回創作童話募集』と書いてある。懸賞小説だ。いや、童話か。優れたオリジナル童話を送りつけて金を儲けるというマルクスさんも認めた経済活動だ。ちなみにマルクスさんは知り合いの留学生だ。主催には、あのほのぼのレイクや産経新聞社という実にほのぼのした企業がついている。童話と言っても、原稿用紙5枚以内に「小学校低学年が読める程度の童話」を書けばいいそうである。しかも、一等のほのぼの大賞は賞金30万円。さんじゅううまんええんなんっすよ。30万円もあれば……ぐひひひひ。ああ、いかんヨダレが。

 さて、その30万円を頂くには、まず素晴らしく「ほのぼのした童話」を書かねばならない。童話というのは、まず子供が読むものであって、子供の感性が必要なのである。これは心配ない。僕は精神年齢が低い。未だに女性の乳房に異常な執着をしているではないか。
 子供達が喜ぶモノを書かねばならない。といっても、選考委員は産経新聞の文化部長とか、童話作家とかいう大人達だ。つまり、大人達が見て、「コドモらしい」作品が良いのだ。

 しかも、パンフレットにはご丁寧にも前回大賞作品が掲載されている。『雨の日のお客さま』雨の日、食器店に河童の子供が皿を買いに来る話だ。もちろんなかなか良くできたお話だが、ネット上にはもっと優れたお話を書く人たちがいる(例えば、補陀落通信の『幽霊機関車』)。僕がそうだとは絶対言えないが、このクォリティーぐらいなら、いい勝負になる作品を書けるかもしれない。僕のような駄目な雑文書きも、たまには人を感動させるものを書いてもバチはあたらんだろう。

 スポンサーサイドにも、気を使った童話を書く方が望ましいだろう。この国は資本主義社会だから、仕方ない。この童話賞のスポンサーはほのぼのレイクと、産経新聞社だ。つまり、恐い借金取りを登場させて、
『こわいおにいさんは、「借金はらわへんから、おフロで働いてもらうからな」と言っておねえちゃんをどこかにつれていきました。げんかんさきで、おかあさんは泣いています』
とか書いて、ほのぼのレイクの関係者をほのぼのしなくしたりしてはならないわけだ。さらに、産経新聞社の意向に沿って、登場人物を意味もなく日の丸に敬礼したり、「天皇陛下万歳!」とかしたりすればいいだろう。ひひひひ、これで人生最良の夜を送れるわけだ。

 では、そんな点を注意して、童話を書いていこう。例えば、こんなのはどうだろう。――浮かんできたぞ、童話のネタが。あめゆきとてきてんじゅ。てぶくろをかいに。

 ほのぼのせんせい:作 腹黒間男
「ぼくのクラスのせんせい、少しかわっているよ」
 としき君は、晩ごはんのがおわってごちそうさまをしたあと、お母さんにきょう一日がっこうであったことをはなします。
 としき君のお母さんは、このとしき君のお話を聞くのがだいすきです。昨日は、校庭のかだんにきれいなチョウチョが来たお話でした。としき君の先生は、年を取ったおじいちゃん先生です。
「どこが変わっているの?」お母さんは聞きます。
「いつも、びくびくしているの」
「あら、それは変わったと言うより、こまった先生ね。としちゃんたちが先生にいじわるしているんじゃないの?」
 すると、としき君はすこしおこったかおをして、
「そんなことないよ。せんせいはぼくらじゃないだれかにびくびくしているんだよ」
 と言い返しました。
「んじゃなんで、びくびくしているの」
「四月にあった入学式で、『君が代』を大声で歌って、ほかの先生からいじわるされているんだって。ひどい話だよ。日本のこっかは君が代なのに」
「ふーん、かわいそうな先生ね」お母さんは少し、こんな先生でいいのかしら、としんぱいになりました。
「でもね、クラスのみんなも、先生がびくびくしている理由はほかにもあるって思っているよ」
「どうして? ほら、うちのお父さん、会社があまり好きじゃなくても、日曜日は接待ゴルフに行ってるじゃない」
 としき君はくすくすわらいました。 「クラスのみんなね、『先生は実は北朝鮮の工作員で、公安にマークされているからだ』とか『ナスダックで大損した』とかいってたけど、僕見たんだ」
 というと、としき君はじぶんお茶碗を流し台に持っていきました。としき君はお手伝いをよくする子です。
「今日の学校の帰りにもね、先生が知らないおじさんに『あと一週間だけ待って下さい』って頼んでたよ。ホントに真剣に頼んでいて、僕なぜか先生がかわいそうと思ちゃった」
 そういいながらランドセルの中から、しゅくだいを取り出しました。今日のしゅくだいはたしざんのプリントです。
「そのこわいおじさんが、『まあ待ちますわ』と言って帰っていった後、先生ぼくらに気付いて、ビックリして、それから苦笑いしながらぼくにおかしなことを言ったんだ。お母さん意味を教えて」
「それで、先生はなんて言ったの」
 としき君は答えました。
「『ご利用は計画的に』」

(2001/6/20)

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