黒ネズミと白ネズミ
折々の雑文 #33
むかしむかし、ある村の食物庫にネズミがすんでいました。カンカンと日照りの強い外とは違い、食物庫中は温度が低く、ネズミたちにも快適な世界でした。しかも、食料は豊富にあって、ネズミたちはとってここはまさに楽園でした。いろいろなネズミたちがいましたが、この食物庫を支配していたのは、黒く太ったネズミでした。
「ん、おめえ俺に逆らうのか?」
バケツの上に落ちていた小さなジャガイモを囓った、子供のネズミが黒ネズミにいたぶられています。いたる所にある食物は、黒ネズミの一存によってのみ、食べることを許されていました。やっかいで自分勝手なネズミです。
「度がすぎるんじゃないのか」
ガリ版を刷るいきがった学生運動家のような叫び声がしました。
「あいつか……追放したのに……」
リベラルな思想は、独裁者黒ネズミの敵です。また声がします。したり顔の白いネズミが顔を出しました。
「たった一粒の米粒を食うために、どうしてあなたの許可がいるのか?」
いかりを内に秘めた白ネズミは、黒ネズミを睨み付けました。まじまじと他のネズミからも見つめられた黒ネズミも、またいかりで赤くなりました。
「もうやめるんだ」
うなり声を上げた黒ネズミは、白ネズミの言葉を遮るように彼に躍りかかりました。なりふり構わない攻撃を仕掛けた黒ネズミでしたが、白ネズミが反撃におよぶ前に、心臓発作を起こして倒れました。意外な最後です。ようやく、食物庫のネズミたちは、自由を得たのでした。うまいものを好きなだけ食べる自由を。でも、食物庫番の残酷な藪親子が倉庫の戸を開けたとき、ネズミたちの楽園は終焉を迎えました。すべてのネズミたちは、食料をあらかた喰われいかり狂った藪親子にねずみ取りや毒の餌などで皆殺しにされて、死骸は食物庫前の溝に捨てられました。がんばって(?)黒ネズミをたおした白ネズミも呆気なく毒の餌に倒れ、死骸は食物庫前の溝に捨てられ、それから長い年月が過ぎた後も、倉庫があったところは「鼠溝(ねずみこう)」とよばれたそうな。
(2001/9/21)
――赤ずきんちゃん★Overdrive・おはなし雑文企画参加作品
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