折々の雑文 第46回

単位のための闘争

折々の雑文 #46

 新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。これからの四年間、酒を呑んだり女の子を引っかけたり酒を呑んだりと大学生活を大いに楽しんで頂きたい。
 さて、大学とはやはり勉強するところであります。大学というところは、単位を規定以上取らないと卒業できない。これを誤るとエラいことになる。バイトに夢中になって、気が付いたら留年・中退、逮捕、自己破産、強制入院、などの憂き目にあい、はやくも負け組人生が確定することもあり得るのだ。

 しかし、単位取得とはそれほど難しいものではない。自分のペースにあった取り方をすればなんとかなる。この駄目人間の私だって、あとわずか二〇単位だ。しかも卒論とゼミで八単位確定なので、もうゴールは間近だ。でも、私の人生の特徴として「詰めが甘かった」ことが怏々としてあるので、油断は禁物なのは言うまでもない。そこで、ここまでの茨の道を歩いた私が単位を最も少ない労力で、取るコツをあなたに伝授しよう。たった一言を念頭においてくれたら良い。
「単位取得とは情報戦である。」
 情報である。どれだけ情報を効率的に集められたか、これがとても重要である。どの先生の講義が簡単に通るか、どの講義が出席をあまりとらないか、どの先生が偏屈で落としまくるか、全てをチェックする必要がある。これは黙っていては得られるものではない。サークルの先輩、同学年の友人、近くの定食屋のおばちゃん、「僕の講義は優で通してあげるし、いいところに就職させてあげるよ」などとベッドの上であなたの胸を揉みながら囁く教授など、様々情報媒体がある。

 そして重要なのは、これらの情報を取捨選択することも重要である。「遊んでても、単位は余裕だよ、だからおれとドライブに行こうよ」というあの先輩は法学部四回生の癖に、就職活動もせず、未だに民法入門を三〇点で落とした人ならば、信用に値しない。あの「僕と寝てくれ」といった教授は昨日セクハラ疑惑が大手新聞にすっぱ抜かれ、教授会で集中砲火を受けて懲戒解雇間際ならば、やらせてあげる義理なんかまったくない。
「あの先生の試験は、毎年『魔女裁判』に付いて聞くから、教科書のここを覚えたら大丈夫やで」
「あの先生は出席だけしてたら、点がかなり付くよ」
「あの先生、研究室にミニスカート穿いて行ってサービスしたら、優で通るわよ」
 と具体的な情報を信用すればよい。もちろん、それでも落ちる場合もある。でもそれで教授を刺すために夜道に後を付けるのではなく、何故駄目だったのか、ではどうすればいいのかと反省して次回に生かせばいい。一度ぐらい失敗しても、卒業には何ら支障はない。それぐらいの余裕はどこの大学でも用意されている。とにかく友達から掃除のおばちゃんまで情報を集め、それを参考に自分に一番あった授業の取り方を考えるのも大学教育の一部だと思う次第だ。ひいては、この情報解析能力が社会人になっても役に立つとすら思う。

 社会人の方は甘いと思われることだろう。確かに甘い。しかし、政治闘争など大人の特権でも何でもなく、幼稚園の砂場でも園児たちにとっては、パレスチナのように陰謀と謀略に満ちた世界ではないか。それに、自分にあった単位の取り方なども出来ない奴が、社会に出て要領よく上手に仕事が出来るとは私は到底思えない。

 もちろん、私は未だに未熟で、最近になっても情報の重要性を痛感する次第である。四回生になったいまでも、シラバスを読むと新たな発見がある。例えば、私の通う京都三大祭り殺人事件大学では、予備登録というのが存在する。人数の制限のある科目や、人気のある教科は、最初に予備登録をしないと登録できないようになっている。これを教務課は、今年からもっとも楽勝と呼ばれるある科目にも設定した。

 その科目は、登録者数が一千人もあり、単位配給科目であるのは周知の事実であるようだ。実際、私はこの科目を三回生後期に「切り札」として使った。出席だけしていれば、優に近い点数で通るという非常に有り難い科目だった。就職活動中の四回前期もまだこれを履修できる。これで卒業は余裕だと思っていたら、時間割を良く読むと、備考欄に予備登録が必要であると書いてあった。気付いたのは、今日の朝だった。予備登録は既に提出した後だった。

 まあ、この程度の失敗はどうってことはない。しかし、四回生にもなっても、他の予備登録した科目がことごとく落ちるとはどういうことだ。まったく納得できん。教務課にもの申してやると、意気込んで教務課に殴り込みをかける最中に、K藤君にあった。彼は一年下の後輩で、珍しく私に「先輩、あいつシメておいて下さいよ」となついている後輩だ。
「先輩、『切り札』は予備登録通りました?」
「気付かなかったんや。他に登録したやつも殆ど全滅や。わし四回にもなって落ちるとはおもわへんかった。教務課に文句言ってやろうと思うんや」
「あれ先輩知りませんでした?」
「えっ」
「予備登録って二日ありますよね」
「あるな」
「予備登録って先着順で、人気あるやつは一日目に提出しないと落ちるらしいですよ」
「ええっ」
「先輩、履修要項に『先着順』って書いてますよ」
「なにっ」
「……先輩、四回になっても知らんかったですか」
 んなアホな、と思って履修要項を見たら……トホホ、ホントに書いてあったよ。
 そんなわけで、新入生のみなさんは、履修要項をしっかり読んで情報の漏れがないようにして、楽しい軟派大学生の道を歩んでもらいたい。

(2002/4/8)

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