公営競技の交付金制度について  その問題点

1.地方公営競技事業は地方自治体財政や公共の福祉増進に多大な貢献

 地方公営競技事業(地方競馬・競輪・競艇・オートレース)は、もともと戦災復興のために多額の費用を必要とした地方自治体財政に寄与する目的で始められ、以降約50年間にわたって、それぞれの地方自治体の貴重な財源として住民のために使われてきたほか、それぞれの施行自治体から納められる交付金を通して畜産振興や船舶・機械産業振興、社会福祉の増進やスポーツ振興のために使われてきました。


2.バブル経済崩壊以降、8年連続で売上げが低下

 かつては「不況に強いギャンブル産業」と言われていましたが、健全レジャーとして定着してくる中で、今や「公営競技の売上げは景気のバロメーター」となっており、バブル経済が崩壊して以降、売上げは8年連続で下がり続けています。

3. 赤字決算施行者が増え続け、事業から撤退する施行者も

 8年連続の売上げ低下の中で、収益も一段と低下し、公営競技を施行する159団体(455地方自治体)のうち、平成10年度末で実に58団体が赤字となっています。
 各業種別に見ると次の通りです。
 ●競  輪 84団体中、32団体が赤字
 ●地方競馬 25団体中、21団体が赤字
 ●競  艇 42団体中、2団体が赤字
 ● オートレース   8団体中、5団体が赤字
 こうした状況の中で、ここ4年間の間に競輪では、すでに9団体が事業からの撤退を余儀なくされていますし、このままでは更に増えていくのが必至です。
すでに平成12年度末までに撤退した団体
 福岡県五市競輪組合(門司、小倉、久留米競輪場)、高知県競輪事務組合(高知競輪場)、岐阜県六市競輪組合(大垣競輪場)、岐阜県五市競輪組合(岐阜、大垣競輪場)、尾張七市三町競輪組合(一宮競輪場)、静岡県六市競輪組合(伊東競輪場、静岡競輪場)、清水市(伊東競輪場)、千県競輪組合(松戸競輪場、千葉競輪場)、新潟県四市町村競輪事務組合(弥彦競輪場)


4. 競走場の廃止は雇用の面でも地域経済にとって大きな打撃です

 競走場は単に収益を地方自治体に収めることで地域に貢献しているばかりではありません。競走場は発売窓口等で働く従事員ばかりでなく清掃、警備業務で働く人、売店で働く人、競馬のように厩務員や調教師・騎手など実に多くの雇用を保障する場となっています。多くの競走場では「母子世帯の優先雇用」等が行われてきたように、女性労働者にとっての大きな雇用の受け皿としても地域経済に貢献してきました。
もし競走場が廃止になれば、一ヶ所で500人から1500人もの雇用の場が失われることになり、地域経済にとっても大きな打撃になります。


5.赤字になっても納めなければならない交付金が経営を圧迫

 公営競技の交付金は、収益の中からではなく、売上げ額に応じて一定の比率で納付を義務付けられています。そのため売上げが低下している今日では、この交付金が公営競技の経営を著しく圧迫しています。
そして、この交付金は税金とは違って、たとえ収益がなく、赤字になっても納付を義務付けられているのです。
 公営競技施行者が同じように納付を義務付けられている公営企業金融公庫納付金(売上げの約1.2%)は赤字になった場合に還付措置がありますが、交付金は赤字になっても納付を義務付けられており、「地方自治体財政への貢献」という、地方自治体が公営  競技を実施する本来の目的をかなえることができなくなってきています。
 売上げ金額に対する交付金のおおよその比率
  地方競馬  1.4%
  競  輪 3.7%
   オートレース   3.9%
  競  艇  3.3%

6. 全国市長会、関東地方知事会も「交付金制度の見直し=軽減及び赤字になっ た場合の減免措置の創設」等を監督官庁に要請

 こうしたことから、この間、各公営競技の施行者団体や施行自治体議会の協議会、更には全国市長会、関東地方知事会などが相次いで「現行交付金制度の見直し=軽減及び赤字になった場合の減免措置の創設」等を監督官庁に要請しています。
 しかし、通産省をはじめとする監督官庁は現在の制度が明らかに破綻しつつあるにもかかわらず、「交付金は刑法で禁止されている賭博行為の免罪符だから」とか「自助努力が先決」などの理由をつけて見直しを否定しています。
 しかし、交付金制度見直しの必要性は実は1979年に政府の諮問機関として設置された「公営競技問題懇談会の答申」(いわゆる吉国答申)の中で打ち出されていたにもかかわらず、20年間も放置され続けてきたのです。
交付金制度の見直しの必要性は、総理府総務長官の諮問機関として設置された「公営競技問題懇談会」が1979年に提出した「答申(吉国答申)」にも、次のように指摘されていましたが、唯一、競馬についてのみ平成3年の法改正で一部改訂が行われただけで、あとはまったく改訂されないまま今日に至っています。

「吉国答申(1979年)」より抜粋

交付金の比率を定めた各競技実施法の別表については、その制定以来改訂されていないので、各競技の売上げ金額の増加状況等を考慮して改訂を図ること。なお、その際、施行者収益の改善に資する方向で交付金の比率を調整することについても検討すること。
 一部の施行者については、開催経費が年々上昇する中で収益状況が悪化しているところも見られるが、交付金が売上げ金額に対する比率により算出されることとなっていることもその一因であるとの指摘があり、施行者収益の悪化を防ぐ見地からは交付金の比率を収益に対する割合として定めることも一法であるとの意見もあった。


7. 特に競輪、オートレースの交付金については、従来から「通産省の小遣い銭で は?」と批判されてきたように、あまりにも不透明です!

 日本船舶振興会(現・日本財団)については、もともと「笹川良一の私物化では?」との批判が根強かったことから、その批判をかわすためにも補助金交付先と交付額については公開されてきました。そして「交付元の団体と交付先団体との役員を兼務してはならない」「笹川財団の名称を日本財団に改める」など、一定の改善が行われてきました。
 また、地方競馬全国協会の交付金についても、その金額が他種競技に比べて少なく、おおむねその補助金交付先や交付金額についても納得できる内容です。
 しかし、通産省の所管である日本自転車振興会と日本小型自動車振興会の交付金については、1995年3月18日付朝日新聞で「通産省のポケットマネー化している」として、その一部が暴露されたように、通産官僚の天下りポスト確保のための団体への高額補助金の支出や補助金の迂回による日米交渉資金の捻出などの疑惑に満ちています。
  情報公開化の流れの中でようやく通産省も平成8年度分から日本自転車振興会と日本小型自動車振興会の交付金について交付先及び交付金額を明らかにし始め、「情報公開している」と開き直って いますが、朝日新聞で指摘された通産事務次官の天下り先である「財団法人産業研究所」には相変わらず平成9年度に12億6千万円余の補助金が交付されており、実態は何一つ変わっていないことを物語っています。
 その他高額補助金交付先は以下の通りですが、それらの団体の財務内容はいっさい公開されていないのです。
日本自転車振興会平成9年度補助事業計画一覧表より
(財)機械システム振興協会 1,505,882千円
(財)産業研究所 1,260,867千円
(社)日本機械工業連合会 1,509,586千円
(財)機械振興協会 678,721千円
(財)車両情報センター 1,538,000千円
(財)日本情報処理開発協会 1,144,864千円
(財)日本自転車普及協会 7,577,567千円
(財)国際経済交流財団 1,010,410千円
日本機械輸出組合 594,621千円
(財)車両競技公益資金記念財団 1,610,000千円