全競労委員長と各単組委員長の連名による抗議の申し入れ書

                                             2002年 月 日
            殿 

日本財団(財団法人 日本船舶振興会)笹川陽平理事長の
全国モーターボート競走施行者協議会総会における挨拶に関する抗議の申し入れ

                      全国競走労働組合                                  中央執行委員長   竹村 美也子

 競艇事業の発展へ向けた貴職の日頃のご奮闘に敬意を表します。
 さて、平成14年2月13日に開催された全国モーターボート競走施行者協議会第2回通常総会における日本財団理事長・笹川陽平氏(全国モーターボート競走会連合会名誉会長・東京都モーターボート競走会会長)の挨拶は、「金は出すから法改正の動きはするな」「法改正を言う前に自助努力が先だ」「従業員を解雇し、もっと安い賃金で再雇用しろ。そうすれば充分にもうけが出るはずだ」という主旨であり、私たちはこうした法的にも社会通念上も許されない挨拶を平然と施行者協議会総会でさせている施行者各位の姿勢に強く抗議するとともに、貴職におかれてはこうした政治的恫喝に屈することなく、今後も労使が協力しながら競艇事業の存続発展をめざしていくという基本姿勢を堅持するとともに、競馬や競輪・オートレースと同じように筋を通して交付金の軽減を含むモーターボート競走法の改正へ向けた取り組みを開始されるよう強く申し入れます。
 なお、この笹川陽平氏の挨拶は、以下の点において到底容認されるものではありません。
 第一に、日本財団理事長である笹川陽平氏が、各施行者に対し「日本財団からの助成金」を「中小造船業者に貸し付けている資金がたまたま需要が少ないので、今年度4月以降200億円、来年度も100億入れます。」と明言している点です。
 その後の調査によって、この「資金」は一旦「競艇情報化センター」に入れ、そこから各施行者に貸付をするということが判明しましたが、言うまでもなく、日本財団が行う「交付金を使った助成事業」は、モーターボート競走法第21条及びモーターボート競走法施行令第17条によって、「振興会は事業計画および収支予算の認可を受けようとするときは、当外事業年度開始の1月前までに、申請書に事業計画書及び告示で定める様式の収支予算書を添えて、国土交通大臣又は所轄地方運輸局長に提出しなければならない」とされています。
 そして、この助成金の申請受け付けは前年の10月に行われ、その後日本財団の理事会や評議会を経て事業計画が策定され、国土交通大臣に認可申請が行われ、所轄大臣の認可が下りてはじめて実施されることになっています。
 この挨拶がされた平成14213日時点で、14年度の事業計画に関する国土交通大臣の認可が下りていないことは勿論のこと評議会の最終決定もされていないと推測されますし、15年度についてはその申請の受付すら行われていないのです。
 すでに平成51012日付けの運輸省通達(海総第411号)において、「今般、専用場外発売所の設置をめぐり、モーターボート競走法違反の嫌疑を受ける事態が生じていることは、まことに遺憾なことであります。」として、「日本船舶振興会関係」にも「イ、1号交付金運用専門委員会、2号交付金運用専門委員会及び海外協力援助専門委員会の機能を拡充する。ロ、同会役員の交付金被交付団体の役員との兼職を段階的計画的に解除する。」よう指導しています。
 したがって213日の段階で、発言にあるように支出を決定しているとすれば、それ自身が完全な違法行為と言わざるを得ません。しかしルールを無視した笹川氏の発言は、笹川財団を日本財団に名称変更し、会長を曽野綾子氏にしたものの、笹川陽平氏(あるいは通称笹川一族)が依然として競艇業界の実質的オーナーであり、その利権を私物化しているという実態を改めて示したものであると言えます。こうした私物化は「特殊法人改革」という政府の基本方針からしても、明らかに指弾されるべき実態です。
 第二の問題は、笹川氏がその挨拶の中で、「競艇場従業員の賃金を引き下げろ、そのために現在の従業員は一旦退職金を支払って解雇しろ」という趣旨の発言をしている点です。
 笹川氏が理事長を務める日本財団は、各競艇場から集めた交付金を各団体へ助成する機関であり、名誉会長を務める全国モーターボート競走会・東京都モーターボート競走会は選手のあっせんや審判など競技の運営実務を行う機関です。いずれも法的にも実質的にも競艇場における労使関係、雇用関係の当事者ではありません。
 競艇場における労使関係・雇用関係の当事者は、施行者である地方自治体とそこで働く私たち従業員であり、その当事者が自主的に賃金その他の労働条件を決定するのが、労働基準法や労働組合法における原則であります。
 私たち従業員の労働組合も売上げ低下・収益の低下が進行する状況の中で、これまでも様々な合理化に協力してきましたし、今後も経営の現状に配慮しつつ、「場の存続=雇用の安定」を基本姿勢にしていくつもりです。
 しかし、当事者ではない笹川氏が、競艇場従業員の賃金の引き下げを求めると言うのは、筋違いであり、これは「労使関係への不当な支配介入」にあたることは言うまでもありません。
 ましてや、笹川氏の発言は経営悪化のすべての責任・すべての犠牲を私たち従業員に押し付けて競艇事業の存続を図ろうとする暴論であり、ギャンブル事業だということで社会的な差別を受けながらも長年にわたって競艇事業に従事し地方財政にも多大な貢献をしてきた私たちを、まったく「関係者」「事業をになうパートナー」とも見ない横暴な姿勢が端的に示されており、絶対に許せない内容です。
 私たち競艇場従業員は一般の常用労働者とほとんど変わらない月当たりの勤務日数があり、厚生労働省によっても「継続雇用の実態にある」「常用的労働者である」と認められ、雇用保険や厚生年金の適用を受けているのであり、家計補助的なパート労働者とは異なり、競艇場の収入で生活のすべてを支えているのです。かつて厚生年金の適用が実現した時、「ここまできたら行政職二級の賃金を適用し、月給制の安定した賃金体系にすべきだ」という問題意識を披露した施行者がいたように、共に事業をになうパートナーにふさわしい安定的な労働条件の確立にこそ施行者は務めるべきです。
 第三の問題は、そもそもモーターボート競走法では、その第1条及び第22条の5でモーターボート競走の目的、日本船舶振興会の業務、交付金の使途を定めていますが、この条文のどこをさがしても笹川陽平氏が言うような「従業員の首切りのために4月以降200億円、来年度も100億円入れる」というような交付金の使い方が許されるはずがありません。
 もしこうした目的に使われるとすれば、それはモーターボート競走法そのものに違反していることは明白です。
 又、「競艇情報化センター」から各施行者への資金の貸し付けには起債が必要ですが、総務省地方債課によって明示されている「起債の要件」には、どこをさがしても「競艇場従業員の退職金支払のための起債」が認められる余地はありません。                                                 以 上