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この”鬼子来了”は、2000年カンヌ国際映画祭で、グランプリを受賞しながら、 未だに中国大陸では、上映が許可されていません。 いわば、いわくつきの映画です。 山肌だけが際だつ中国の寒村! スクリーンには、いきなり高らかな軍艦マーチが流れる。 モノクロトーンの中、砲台に駐留する日本海軍の小隊が緊迫感もなく、行進しながら奏でる 軍艦マーチ!! この導入には、ちょつと戸惑った。この緊迫感・緊張感のなさは何だ!! これまで戦争映画を観てきて、軍艦マーチは、まさに戦闘機が飛び立ったり、戦艦の戦闘 態勢の戦意高揚のバックグラウンドの音楽だった。 軍艦マーチという、いわば「日本鬼子」の象徴が、緊迫感のないような使われ方を観たの は意外だった。 ところが、なんと、あのラストの30分の殺戮の狂気のシーンで、あの小隊が、軍艦マーチ を高らかに奏でている。しかも、殺戮を目前にしながら、無表情な軍楽隊!! この狂気のシーンには、またびっくりした。 まさに、姜文は、ラストの狂気のシーンを導入から暗示していたのだろうか?? 日本軍の占領下にありながら、日常的には平穏に暮らしていたみられるマー・ターサン (姜文)の家に、正体不明の「我 Wo」が、ふたつの麻袋を投げ込む。 パンフレットはいう! 「すべてはふたつの麻袋から始まった。」と。。。。。 麻袋のひとつが、日本兵の花屋小三郎(香川照之)だ!! 捕虜になった花屋の傲慢な態度から生きたいとの命乞いの気持ちの移り変わりがよく 描かれていた。 この名もなきいち農民出身の日本兵も、日本軍の中では、「命令」の名の下に翻弄さ れ、ラストシーンでは、日本軍の「命令」ではなく、解放者である国民党軍の「命令」 の下に、マーの首を刎ねるのだ! 花屋は、半年間も、マーの下に、捕虜といっても、いわば庇護されていたのに、しか も、マーの提案で、花屋を解き放って、元の小隊まで帰ることができたのに、 花屋は、マーの首を刎ねるのに、まったく躊躇するところがない。 まさに、日本軍であろうと、国民党軍であろうと、「命令」のままに動く花屋は、 「鬼子」の化身なのだろうか。 このときの花屋の表情は、一点の曇りもなく、仙境へ導く西太后時代の首切り人の 表情なのだろうか?? それまでの花屋とは、表情が全く違う!! 花屋が日本刀で刎ねたマーの首は、二転三転しながら地面に着地し、ローアングルで 周りを見据え、最後に観客席に正対にして、きりりとした片目が観客に向かい、笑み を浮かべて、目を閉じる。 (映像も、広場のハイアングルからローアングルへの急転が実に効果的だ! しかも、モノクロトーンからカラーへの展開!) なんというラストシーンだ!! あの殺戮シーン以上に、印象的なシーンだ!! マーの首のあの目線と笑みは、何なんだ!! このラストシーンには衝撃を受けた。 びっくりした気持ちで席を立った。 このラストシーンについては、気になって、今、こんなことを考えている?? ひとつは、マーと愛を交えたユィアル(姜鴻波)は、自ら命を断ったのではないだろ うかと。。。。 マーとユィアルだけが、海辺の舟の上から殺戮が行われている燃えさかる山間の村を 呆然と眺めている。 ユィアルは、マーの子供を身ごもっていたが、あの村では、親や前夫の間の子供が 殺されている。 村の惨状を目の当たりにして、ユィアルは、マーの子供を身ごもったまま自ら海に 身を投げたのではなかろうか?? そういうシーンは、映画にはないが、そう思えてならないが。。。。。 マーは、「我」という災いを招き、村人をはじめ愛する人とすべてを失った。 斧を手にして、マーは、戦ったのだ!! 戦いの結果、仙境へ導いてくれる首切り人の手で、ユィアルのもとへ旅立つ安堵感 となったのだろうと。。。。 あの微笑みは、ユィアルへの想いか、きっと、またユィアルから怒られるかな〜あ と恥じらいながら(笑)。。。。!! もうひとつは、 パンフレットでは、『「我」は八路軍の兵士だ、』、だから中国政府は上映を許可し なかったのだ、と謎が明かされている。 ほぅ、そうなんだ、と一応は思った。 ただ、そうなんだろうかと?? マーにとって、花屋は、まぎれもなく「日本鬼子」だ! しかし、事の発端と結末はどうなんだ! 寒村、あるいはマーの周りでは、日本軍、八路軍、国民党軍、あるいは国民党軍の 背後の連合軍と、「権力者」は、めまぐるしく変転している。 まさに、「鬼子」とはだれだ!! マーは、首を刎ねられても、不敵な微笑みを浮かべて、客席に向かって、訴える!! 解放後の中国にあって、様々な権力闘争が起きている、これからも起こるであろう 権力闘争! 老百姓よ! もっと目を開けて、事の核心を見極めよ! 客席に向かって、強烈なメッセージではないか?? このマーの刎ねられた首の目と微笑み、これこそが中国政府にとって大胆不敵なの ではないだろうか?? この「鬼子来了」は衝撃的だし、まだよく理解できてないと思う。 だけど、こういう映画が、中国で制作されていること自体がファンとしてはうれしい。 姜文は、監督としても今後が期待される。 (2002.6.22記) |