香港食い倒れ
<リージェント>篇

1.予約から到着まで


しの(文):海辺のホテルが大好き
G(絵):おいしいものが大好き

(1)ドキドキの予約
香港の3大ステキホテルと言えば、ペニンシュラかマンダリンかリージェント。(注:リージェントは2001年より資本系列が変わり「インターコンチネンタル 香港」になりました。)
ツアーで安いホテルに泊まり、ショッピングバックを抱えて街を駆け巡る旅行はもう卒業。
ラグジュアリーなお部屋で香港湾を眺めながらお茶を飲んだらゼイタクかもしれない…。

旅行の予算を決めると、いつものようにホテル探しは私にお任せです。私は雑誌の記事を集めたりインターネットで検索したりして、旅行情報を集めます。
飛行機代はなるべく安くおさえて、その分ホテル代に回していい部屋に泊まる。そんなお得ゼイタク術が得意なのです。
同行のGが行ってみたいレストランが集中しているからと、尖沙咀側に泊まりたいと言います。
「じゃあ、リージェントに泊まろうか!」
私は意気込みます。
ペニンシュラは日本人ツアー客にうんざりしていて、 日本人に冷たいらしいという噂をちょっと聞いたもので…。(あくまで噂です)あこがれのリージェントのジャグジー!

リージェントは 目の前が香港湾という絶好のロケーションに建っている景観のよさを誇るホテルです。
ホテルのパンフレットやガイドブックの写真で何度も見ている、香港湾に流れ落ちるような大きなジャグジーも、ひよっこOLの頃からの あこがれでした。
そのホテルにいよいよ泊まれるんだ。
ドキドキしながら、ホテルにメールを送ります。

『私たちは、仕事の息抜きのために休暇にとって香港に行き、以前からのあこがれだったそちらのホテルに泊まろうと計画しています。
空き状況と室料を教えてください。お得な割引きパッケージがあったらぜひ紹介してください。』  

英語で苦労して文章を書いて送ると、明け方に家のファックスがジジジ・・・と鳴って、ホテルからの返事を吐き出してくれます。
返事を送ってくれるのはいつもMs.Rという人です。
毎日毎日朝方まで働いているのかしら。もしかして私よりもずっとお疲れOLだったりして!
なんとなく親しみをもちながら、私はさらにMs.Rに質問します。

お部屋は、タイプによってどこがどう違うのでしょうか? 
景色はどう変わりますか? 
なるべく景色のいい部屋がいいのですが・・・。

Ms.Rは、各ルームタイプ別の広さと設備を詳しくタイプしたものをファックスで送ってくれました。
部屋の広さや内装の色、どの階にあるのか、家具は何があり電話がどこにいくつ付いているのかなど、まるで読んでいるだけで泊まったような気分になってしまいます。
特に惹かれたのは、ジュニアスイートのお風呂はジャグジー付き!!だということ。
リージェントのお部屋のジャグジーでゆっくりできたら、なんてステキなのかしら〜〜〜。
私のあこがれはつのりますが、上を見始めたらきりがありません。
なるべく冷静に、ホテルに予約のメイルを入れます。

・ジュニアスイートにジャクジー付きのお風呂があるなんてステキ!!!
 でも予算にも限りがあると夫が言うので、次回の楽しみにします。
・あなたのホテルとホテルから見える香港湾の景色が大好きなので、
 なるべく高層の階にしてください。
・ああ、旅行がタノシミです。あなたのホテルに泊まることで、
 最高の休暇になりますように…。
 などと書き連ねました。(直訳すると変な文ですね)

そして思い切って「リムジンサービス」を奮発しました。

ホテルに頼んで空港までお迎えに来てもらうのです。
電車で行くなら900円、タクシーでも4,200円くらいなのに、なんとこのリムジンサービスは約1万円!
でもこれは、私にとってひとつの作戦なのでした。
私達は初めて行くフリの客だけど、ホテルにはなるべく暖かく迎えてほしい。 できればいいお部屋に通してほしい。そしてホテルライフを存分に楽しみたい。
そのためには空港からゼイタク気分に浸ってみようじゃないの。
そう思って奮発したリムジンです。

さて、このリムジン作戦は功を奏するのでしょうか!? 


(2)いざ、ホテルへ

朝成田を発ってその日の午後に、新しくて広―い香港の新空港に降り立ちました。

でもロビーに出てもなんだか勝手が違うんです。
リムジンサービスを頼んだはずなのに、迎えの人がボードを持って迎えに出ているわけではない。
市街地に向かう高速電車の乗り口はすぐ目の前で、みんなさっさとそちらに向かっているのに、私たちは逆の方へトランクを引きずって歩きます。

「リージェントの人いませんかー?」

しばらく行くと、ホテル別のカウンターがあり、それぞれのホテルの制服を着た人たちがボーッと立っていました。
ペニンシュラはいた、コンラッドもいた。マンダリンのカウンターもあった…。
でもリージェントのカウンターはない。

近くでおしゃべりしているおじさんに
「リージェントはどこでしょう?」
と聞いたら、その人でした。
手に持っていたメモを見て慌てて名前を確認しています。
「リムジンはこれだけど、いい?」 
値段を紙に書いて聞きます。

クスン。身なりを見て払えないと思われているか…。
一瞬心が揺れます。もったいないな、やめようかな。でもいいんだもん。
リムジンでゼイタク気分だもん。

というわけでなんとかリムジンに乗り込みます。
リムジン乗り場はすごーく遠くて、はっきり言って電車やタクシーの乗り場の方がよっぽど近くて便利です。

リムジンのドライバーはフレンドリーでおしぼりや水もくれて、香港ポップスでいいのに西洋音楽をかけてくれて、観光案内までしてくれました。
私も一生懸命お相手。
だってリムジンの無線からホテルに途中連絡が行くと聞いていたし(実際やっていた)、その時にひとこと
「いいお客さんだからいいお部屋にしてあげて」
って言ってくれないかなーなんて、言うわけないけど。

30分くらいでリージェントホテルに到着。
「Welcome to the Regent!」
ドライバーさんの言葉に送られ、ドアマンに迎えられてせいぜい気取ってロビーに入ります。

でも、あれ? せっかくのリムジンの客なのに、誰もお迎えに来てくれない。
リゾートでよくある部屋でのチェックインや、ソファーに座ってのチェックインじゃないんだ…、なーんだ。

しょうがなく受付カウンターに行ってそこにもたれてチェックイン。
受付のお姉さんはこちらをちらとも見ずに処理をしています。

けっこう時間が長い。あんまりゼイタク気分じゃないなー。

実は私は、部屋の予約をした時から、チェックインの時に次のせりふを言ってみようとずっと準備していたのでした。
「あのー、もしジャグジー付きだっていうジュニアスイートが空いていたら、見せてもらえませんか…?」
広くてステキなジュニアスイートを見せたら、
「こっちに泊まってみる?」
とGが言ってくれるのではないかと期待していたのです。
すると受付カウンターの向こうから、驚くべき答えが返ってきたのでした。

「実はもう、ジュニアスイートのお部屋を用意してあります。アップグレードしておきました」
「え、りありー? ホントですかあ…。」
嬉しくって痺れたようになっている私に、受付の女性がにっこりと笑いかけます。
「もしかして、ミズ・Rですか?」
改めて胸のプレートを見ると、その人は紛れも無く私とEメールやファックスのやりとりをした、ミズ・Rだったのです。
「どうぞご滞在を楽しんでくださいね」
私はあったけの感謝をこめて言いました。
「サンキュー・ベリマッチ」
こんな時に気の利いたことが言えない語学力の無さが悲しいです。

努めて平静に、お上品なマダムを装って、私はGに耳打ちします。
「ジュニアスイートにアップグレードしてもらえたの」
もちろん、Gはまったく事情をわかっていません。
「え、どういうこと?」
「説明はあとで」
私のマダムぶりっ子はどこへやら。ニタニタ笑ってしまったのでした。


(3)いざ、ジュニアスイートへ!

リージェントのベルボーイのお兄さんに案内されて、しずしずと部屋に向かいます。
部屋は11階で、17階建ての真ん中くらいだけど、まっいいか。

「3階にプールとスパがあって、景色がよくてすごく気持ちいいです」
「朝ごはんもそこで食べられます」
とお兄さんは色々説明してくれます。

私はうなずきます。
「知ってるわ。有名だもの」

そう、よーく知っているの。ホテルのBBSやMLでみんな言ってるんだもーん。インターネットでも見たし、本にもタクサン載っているもんネ。細ながーい廊下です

部屋は廊下の突き当たり、何とドアは両開き。
じゃーん・・・と開けるとあれ?目の前は壁でした。
隣のもっと広いスイートが張り出していて、私の(もう私のものよ)ジュニアスイートは、細長い廊下を通って部屋に入ります。再びじゃーん。ひろーい部屋にやっと出ました。

正面と右手が全面の窓で、応接セットとキングサイズのベットと、大きなデスクと、オーディオセットと・・。

お兄さんが電気の付け方やカーテンの開け方を丁寧に説明してくれます。
インターネットも出来るんだよと自慢ぽく言います。

「日本語は使えるのかしら(ジュニアスイートの報告=自慢をネットでできるかしら?)」
「うーん。たぶんだめでしょう、ソーリー」

でも実際は日本語も使えそうだったんだけどね、やめたの。
だって、使用料2000円も取るんですもの。高いよねー。

ベットの向こう側はひろーいウオークインクローゼット。
そしてクローゼットの向こうはひろーいバスルーム。
シャワーブースは別。

ジャグジーは…なーんだ、普通のバスタブの横から泡がぶくぶくと出るもので、肩や腰に当たるものじゃないけど、まいっか。
バスバブルがよく泡立ちそうです。

ここでもお兄さんが説明します。
「ここのバスタブの蛇口の水圧はすごく高くて、 お風呂のお湯は90秒でいっぱいになっちゃうので あふれさせないように気を付けて下さい」

「知ってるわー、有名だもの」
ベルボーイのお兄さん苦笑。

お兄さんが退場すると、恒例の部屋の写真の撮り狂いです。
荷物が写ると怒るので、Gは荷物を抱えて逃げ惑います。
角度がついた部屋の全景を一枚に収めるのはとても難しいのです。位置やアングルを変えて、何枚もパチパチパチ・・・。

「気が済んだ?」
恐る恐る聞いてやっとGは荷解きです。
「クローゼットから荷物をはみ出させちゃだめよ」
私は突然変身し、ありとあらゆる荷物はクローゼットに押し込んで、リビングやベットの周りに靴下やタオルが置いてあると烈火のごとく怒る、片づけ女になったのでした。

「私のジュニアスイートを散らかすのは許しません」
怯えるG。

滝のようにお湯が出て90秒でいっぱいになるバスタブにお湯をはり、どこだどこだとジャグジーのスイッチを探して、ゴゴゴゴーと泡を出して、ひと風呂浴びて着替えてやっと部屋から出ます。

さあ、街へ出かけましょう! 


(4)最初のディナー

朝成田を発って、香港について、ホテルで荷をほどいて、部屋も隅々までチェックしてもまだ4時です。
香港はやっぱりこの近さが嬉しい! 
ホテルの中をざっと探検して回り、コンシェルジュに頼んで夜のレストランを予約してもらいます。

Gが飛行機の中で熟考して決めた最初のディナーは
「ウーコン上海レストラン」
Gのグルメの神様チャイランさん(「料理の鉄人」の審査員)絶賛の店です。

このチャイランさんが書いた香港のレストランガイドを手に入れてから、私たちの香港ライフはがらっと変わったのです。

その本「香港美食大神」には、地元の人たちで行列になるサービスが良くておいしい店がタクサン載っていて、
「次はチャイラン先生の店だから」
とGに言われると、私もとても期待してしまうのです。

予約はうんと早くして7時なんだけど、(香港のレストランは8時過ぎからにぎわい始めます) まだ4時なのにおなかが空いてきました。
だめだめ!今食べたらせっかくのウーコンで食べられなくなってしまう。

気を紛らわそうとホテルの横のショッピングアーケードをうろつく私たち。
私は安い香港ブランドの服を見たいのに、Gはふらふらとレストランの方に吸い寄せられて行きます。

「ラーメン、一杯だけ食べない?」
そこには、朝のお粥で有名な「翠景粥麺屋」がありました。

ホテルの横なので日本人がたくさん来るらしく、怪しい日本語メニューしか見せてくれないし、値段はやけに高い気がするし、店はファーストフード店みたいにチープだし、私は雰囲気があまり好きじゃないけれど、味はなかなかおいしいのです。

ワンタンメンと魚とレタスのお粥を
「もう止めよう」「残さなきゃダメ」
と言い合いながらけっこう食べてしまいました。

ワンタンメンの麺は細くて歯ごたえがあって、ワンタンはお饅頭みたいに大きくって、蝦のすり身がいっぱいに詰まっています。
スープもおいしい。
もうひとくち、もうひとくち・・・。

あー後悔。晩ご飯が食べられなかったらどうしようー。

それは杞憂でした。ネイザンロードを人ゴミに揉まれながら歩き回り、インド人でいっぱいの重慶飯店の奥の方の店で両替をして(奥の方ほど雰囲気は怖いけどレートがいいのです)、半地下の小さな靴屋で変な靴を買っていたらもう7時過ぎ。

大変、大変!いそいで店に行きます。もう食欲モリモリです!

地下にあるウーコン上海レストランは、入り口に鯉が泳いでいる池があって、受付に今陽子みたいなおばさんがすっくと立っていて一見高そうだけれど、中はテーブルがぎっしり、人もぎっしり、ワイワイにぎやかで庶民的です。
鳩です(左側が頭とくちばしです)
そこでGが頼んだのは、
・酔っ払い鳩
・ジャーチャン豆腐
・紅蟹のショウコウ酒蒸しカニでーす
・上海炒飯
・ショウコウ酒「瓶ごとヌル燗」で。

ここの名物の酔っ払い鳩というのは、ショウコウ酒漬けの鳩肉の冷製です。

丸ごと一羽の鳩の肉をそぎ切って、羽を広げた鳩の形に復元して出してきます。
目とくちばしまで付いた頭部が飾りになっていてご愛敬です。
ちょっと辛いけどぷりぷりしてこくがあっておいしいのですが、小さいから紹興酒のつまみにあっという間に食べてしまいました。

蟹はメニューに無いショウコウ酒蒸しをわざわざGが頼みました。
いいけどね。ショウコウ酒蒸しの方があっさりしてそうだから。
でも特別注文なんてなんか気取ってるー。

蟹は季節的に上海蟹じゃないんだけれど、春先だからか殻まで柔らかくてばりばり噛めてしまいます。
香港人式に、殻ごと口に放り込んでぺっと出します。
だってほじほじするスプーンなんて無いんですもの。

厚揚げをざっと甘辛味でいためたジャーチャン豆腐と、ぱらぱらのいため具合が絶妙のあっさり塩味の炒飯で目がひっくり返るくらいおなかがいっぱいになって、
「ごちそうさまでした」
と幸せいっぱいの気分になれました。
ちょっとだけ残ったショウコウ酒の瓶をわしづかみに持ってお会計です。

ここからリージェントには、ぶらぶらお散歩がてら歩いて帰れます。
さあ、帰りましょう。私のジュニアスイートが待っているー。

入り口にはたくさんの人が行列していて、はしゃいで池の前で写真を撮る私たちをじろじろ見てました。



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