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ハラスメントは連鎖する 「しつけ」「教育」という呪縛
以前、大相撲の時津風部屋宿舎で、17歳の序の口力士の少年が親方や兄弟子たちから、 集団暴行を受けて死亡するという事件がありました。 相撲界には、師匠や兄弟子が「しごき」という名目で後輩を竹刀でたたき、殴る蹴ることで鍛えるという伝統があり、 これがいじめの温床となっていたようです。 私も自衛隊という、体育会系の極致の世界にいたのでわかるのですが、体育会系の世界では、 先輩による後輩いじめが日常的にあります。 しかも表面上は、しつけのため、お前を鍛えるため、という大義名分で行われるので性質が悪いです。 先輩の使いパシリにされたり、ミスをしたら必要以上に責められたり、雑用を押し付けられたりします。 少しでも口答えしようものなら、殴られます。 そして、必ず先輩を敬い、その言葉には絶対服従するように教えられます。 なので、一年間耐えて、後輩が入ってきたら、飛び上がらんばかりに喜びます。 今度は、自分が支配する側に回れるからです。 今まで受けてきた仕打ちに対する恨みを、後輩に同じことをすることによって、晴らします。 そして、いよいよ、この悪意に満ちたシステムに疑問を抱かなくなり、 自分が立派な人間になったように勘違いさえします。 先輩は神、後輩は奴隷、という縦社会のカルチャーは、 目上の者にはペコペコし、目下の者には理不尽に威張り散らす、傲慢な人間を作り出します。 弱い立場の者へのいじめは日常化され、もはやいじめとさえ認識されず、正しいことのようにさえ錯覚するのです。 本書は、これこそが、ハラスメントの連鎖の仕組みだと言います。 これはまるで、吸血鬼に血を吸われた人が、吸血鬼となって他者の血を吸うのに似ています。 人間は暴力や悪意に晒されるハラスメントを受けると、ハラスメントを仕掛けてきた人の顔色をうかがって生きるようになる。 その呪縛が強くなるにつれ、ハラスメントにかけられた人は、自分が被害を受けているという認識を捨てる。 (中略) しかし、人間は、自分の生気を奪われたままでは生きていけない。 そこでハラッシーは、奪われた資源をなんとか取り戻そうとする。 とはいえ、ハラッサーから奪い返すことは恐ろしく、できないので、 ハラッシーは、自分にハラスメントをしかけない人にハラスメントを仕掛け、その人の資源を奪い取ろうとする。 (p45ページから引用) こうやって悪意は無限に連鎖し、人々を苦しませていくというのです。 しかもこの連鎖を断ち切ろうと『悪意のある人間』を暴力でもって排除しようとすると、 暴力に込められた悪意が、さらに悪意を増殖させてしまうというから恐ろしいです。 『本当の敵は悪意のある人間ではなく、悪意そのものである』という考え方には、衝撃を受けました。 アメリカが9.11事件の報復にテロとの戦争を掲げ、テロで奪われた命の何百倍もの命を奪ったために、 大勢の人から反感を買い、戦いが泥沼化してしまったのも、このためだったのですね。 悪魔を滅ぼそうとして、悪魔を増殖させてしまったとは皮肉なものです。 いじめる人に、どう対処すれば良いのか? どうすれば、いじめられない状況を作り出せるのか? それを考える上で、とても重要なことを教えてくれる本です。 『ハラスメントは連鎖する 「しつけ」「教育」という呪縛』のご注文はこちから >>> 『書籍レビュー』の目次へ戻るトップへ戻る |
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