いじめ駆け込み寺 書籍レビュー
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職場はなぜ壊れるのか

 著者: 荒井千暁
 出版社: 筑摩書房
 サイズ: 新書
 ページ数: 222p
 発行年月: 2007年02月
 本体価格 700円 (税込 735 円) 送料別

「文明の代償は、不幸である」
これは心理学者フロイトの言葉です。
高度に発達した現代社会では、文明の庇護を得るために高い代償を支払うことを誰もが強要され、
その結果、精神に不調を来たす人が増えているのだと思います。

本来、文明とは、外敵から身を守り、食料を確保し、病気を癒し、安全に暮らすために発達したものです。
しかし、皮肉なことに、これが実現された日本では毎年自殺者が3万人も出るような状況になっています。
これは戦争による死者に匹敵する数字です。
なぜ、このような状況になってしまったのか?

実は、文明が発達すれば、するほど、高い代償を求められるからです。
人並みの快適な環境を得ようとすれば、お金が必要となり、そのためには大変な勉学と、身体に鞭打って働くことが必要になります。
しかし、働くということが、ある種の拷問に近いような状況になってしまっているのです。

年功序列に代わる制度として導入された成果主義は、
会社が労働者を能力や成果、態度などで評価し、その給料を決めます。
利益向上のための画期的なシステムだ思われた成果主義ですが、

決定的な欠点がありました。人間には公平な評価ができないのです。

上司の胸先三寸で、どうにでもなってしまう状況。
成果を出したのに、態度が悪いからと、マイナスに評価される理不尽。
お互いに足を引っ張り合い、気に入らない人間を意図的に悪く評価する陰湿なイジメ。
労働そのものよりも、職場の人間関係の悪化の方が、労働者にとっては辛いのです。
このような過酷な環境におかれ、誰もが出口の見えない戦いを強いられていると著者は説きます。

そして、残酷なことに、この戦いから逃れることは誰にもできません。
代償を支払うことを拒否すれば、文明の庇護から外されてしまうからです。


そうなったら、どうなるか?
一度、文明の快楽を味わってしまった人間は、もう以前の状況には戻れません。
テレビがあるのが当たり前、水道があるのが当たり前の生活を送ってしまうと、
それがなくなったら困るどころか、他人と比べてものすごい劣等感と不幸にさいなまれることになります。

さらに、ニートやホームレスは社会に貢献してないとされ、ゴミのように扱われる現実があります。
誰もがそんな状況にはなりなたくない。
文明の庇護下に立っていたい。見下されるのは真っ平ごめんだ。


しかし、支払わされる代償は、不況の時代にますます厳しくなり、結果、精神を病んだり、
過労死、過労自殺が増えたり、いじめやハラスメントが横行するわけです。

お金だけが大事、利益こそ至上価値……これを得るためには、モラルややさしさなど邪魔なだけ、自分さえよければ、万事OK。

過当競争は、このような残酷な価値観を産み、弱いものは搾取され、奴隷のように使われ、
壊れたら交換可能の部品のように捨てられる。
大人社会のこのような状況を見て、なぜ子供たちにだけ、いじめは悪いことだと言えるでしょうか?

職場に巣食う問題の深さを考えさせられた本でした。


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