東釧路−遠矢−釧路湿原−細岡−塘路−茅沼−五十石−標茶−磯分内−南弟子屈−摩周−美留和−川湯温泉−緑−札弦−清里町−南斜里−中斜里−知床斜里−止別−浜小清水−原生花園(臨)−北浜−藻琴−鱒浦−桂台−網走
太字は主要駅)

 全国のすべての鉄道路線の中で、最も風景が美しい路線だと主張したいのが、この釧網本線である。何しろ、釧路湿原国立公園・阿寒国立公園の2つの国立公園、さらには網走国定公園の中を走るわけであるから、景色がよいのも当然である。ちなみに、国立公園の中を走る路線は全国にいくつかあるが、2つの国立公園の中を走る路線は、全国でもここだけである。JR北海道は、この美しい風景をゆっくり堪能してもらうため、釧路口の釧路湿原を通る区間と、網走口のオホーツク海沿岸を通る区間に、ノロッコ号というトロッコ列車を走らせている。また、オホーツク海沿いの浜小清水−藻琴間にて、DMV(デュアル・モード・ビークル)の試験運行が行われていることで、新たな脚光を浴びている。釧網本線には、昭和62年の初めての北海道旅行で真っ先に乗車したが、さらに平成6年5月と平成16年9月、平成19年10月(一部区間)に再乗車している。
 起点の東釧路(列車はすべて釧路発着)を出ると、列車はすぐに釧路湿原へと入っていく。つい先ほどまで釧路の市街地を走っていたのに、いきなり広大な湿原の風景に変わるところがいかにも北海道らしい。茫々たる湿原に川がゆったりと蛇行し、大小の沼地が点在する風景は大陸的で、「日本にもこんなに広い風景があるのか」という思いを起こさせる。まさに、日本中のどこを探しても、これだけの広大な風景は、北海道でしか見ることができない。列車は全体的に湿原の東端を走るため、釧路から乗車した場合は、どちらか言うと車窓左側の方が景色がよい。しかし、一部は湿原の真ん中を走る区間もあり、湿原にある湖の中で最大の塘路湖は、車窓右側にある。

雄大な釧路湿原の中を走る
【広大な釧路湿原の中を走る】

 釧路湿原駅は、釧路湿原観光の中心となる駅で、数ヶ所ある展望台の1つである細岡展望台の近くにある。昭和63年の開設当時は、シーズン中のみ営業される臨時駅であったが、現在は通年営業されている。また茅沼駅は、丹頂鶴が見られる駅として有名で、冬場は駅のすぐ近くまで丹頂鶴がやってくる。まさに大自然と隣り合わせの路線である。

釧路湿原駅
【釧路湿原駅。駅舎はログハウス風】

 五十石のあたりで湿原が果てると標茶(しべちゃ)に着く。以前は、ここから国後島を望む根室標津まで、標津線という路線が出ていた。沿線には牧場が点在し、白樺林や緩やかな起伏の丘陵など、道東らしい風景の広がる美しい路線であったが、残念ながら平成元年に廃止されてしまった。
 標茶から摩周にかけては、牧場が多く、牛が草を食む風景が見られる。摩周は阿寒国立公園の玄関口で、以前は「弟子屈」という駅名であった。「てしかが」と読むが、読み方が難しく、観光色を出すため駅名改称された。

標茶を出ると牧場が多くなる
【標茶を出ると牧場が多くなる(磯分内付近)】

 摩周から緑にかけては、阿寒国立公園の中を走る。沿線にある川湯温泉は、北海道でも有数の規模の温泉であるが、駅は無人駅である。駅車内には、喫茶店や足湯もある。駅近くからは、硫黄の蒸気を噴出す硫黄山が不気味な姿をさらけ出している。

山小屋風の駅舎の川湯温泉駅
【山小屋風の駅舎の川湯温泉駅】

ローカルムードいっぱいの川湯温泉駅構内
【ローカルムードいっぱいの川湯温泉駅構内】

 川湯温泉から緑にかけては、釧路支庁と網走支庁の境界がある山越えの区間で、駅間距離は沿線最長の14.5kmあり、列車は鬱蒼とした森林の中を走る。この区間を通して乗る人は少ないようで、直通する列車は4往復ほどしかない。

緑駅に進入する普通列車
【緑駅に進入する普通列車】

 緑から知床斜里にかけては田園風景が広がる。このあたりの田園風景は、本州以南のそれとは異なり、麦畑やビート畑などが広がり、いかにも「大地」といった感じである。車窓右側には、裾野が緩やかで頂上がとがった斜里岳が美しい山容を見せており、田園風景に彩りを添えている。

美しい山容を見せる斜里岳
【美しい山容を見せる斜里岳】

 知床斜里を出ると、いよいよ車窓右側にオホーツク海が見えてくる。以前は湧網線・名寄本線・天北線など、オホーツク海を望める路線が他にもあったが、相次いで廃止され、オホーツク海を望める路線はここだけになってしまった。おすすめは、やはり流氷が沿岸まで押し寄せる厳寒期である。一面流氷に閉ざされる風景は、まさに幻想的である。ただ、列車は海岸沿いの小高い丘陵の下を走る区間が多く、海が見える区間は意外と少ない。一方、浜小清水から北浜にかけては、車窓左側に小清水原生花園が広がり、夏場は様々な花が咲き乱れる爽やかな風景が広がり、むしろこちらの車窓のほうが良いくらいである。まさに北海道の夏の優しさと冬の厳しさを、同時に味わえる路線である。また、この区間は別名「グルメライン」と呼ばれており、止別(やむべつ)・北浜・藻琴の各駅は、駅舎に食堂や喫茶店を併設しており、浜小清水駅には道の駅が併設されている。原生花園臨時駅は、小清水原生花園の真ん中にある駅で、冬季には白鳥が訪れることで知られる濤沸(とおふつ)湖が背後に広がり、駅から原生花園内を巡る遊歩道が設けられている。

メルヘンチックな駅舎の原生花園駅
【メルヘンチックな駅舎の原生花園駅】

 北浜駅は、オホーツク海に最も近い駅として知られており、旅情豊かなたたずまいを求めて、多くの鉄道ファンが訪れる駅である。駅舎内の壁は、名刺や使用済みの切符等でぎっしり埋め尽くされており、中には、スピード写真で撮った顔写真や、高校入試の不合格通知といった変わったものまで貼ってあったりする。駅舎の脇に展望台が併設されており、オホーツク海と知床半島の雄大な風景を見渡すことができる。

※北浜駅の写真をサムネイルにしましたので、ご参照ください。写真をクリックすると大きくなります。左上から、駅舎全景→駅名標→駅舎内→知床斜里方面に発車する列車→展望台より望む網走方面の風景→展望台より望む知床斜里方面の風景

 終点の網走は、釧路と並ぶ道東観光の玄関口。市内にも、網走刑務所・モヨロ貝塚・天都山など見所が多い。駅舎にあがる階段の脇にある駅名板が縦書きなのは、刑期を終えて刑務所を出た受刑者に、まっすぐに人生を歩んでほしいという願いが込められている。

網走駅駅舎
【網走駅駅舎】

 釧路から網走まで約3時間の旅であるが、風景の美しさでは、この路線自体が観光地といっても決して過言ではない。観光シーズンには、トロッコ列車も運行されており、道東の大自然を気軽に味わえる路線として、ぜひ道東観光に取り入れたい路線である。