四季の箏曲 第4集 秋のしらべ

 1974.10 平野健次
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四季の箏曲(秋のしらべ)について
  秋の風物といえば、まず、月と風、植物では紅葉に菊、そして萩・薄などの七草、また、長き夜に響く砧(きぬた)の音も、かつては秋の情趣を表す代表的なものであった。人事においては、秋の夜長を訪れもせぬ人を待つ気持、あるいは、さかりを過ぎて人に忘れられた人生の秋、とかくうら淋しくも物悲しいことが多く、物語にも、秋の情趣を背景とした悲哀切々たるものが多い。

 音楽においても、こうした秋の気分の表現となると、春に劣らず豊富であるのが、特に邦楽の特色であり、あるいは、日本人の民族的特質であるのかもしれない。

 特に擬声的表現となると、虫に風、そして砧などが、最も音楽化しやすい題材といえ、これらを、王題とした邦楽は枚挙にいとまがない。「秋風」「砧」などを表現した地歌・箏曲だけでも数多く、それらは、別に「秋風物」「砧物」としてまとめられるほどである。

 秋を背景とした物語となると、『平家物語』の「小督(こごう)の話は、嵯峨野の秋を舞台とするもので最も有名であり、これに基づく地歌・箏曲もこれまた多い。西の嵯峨野に対して、東の那須野は、凄絶たる趣きで、ここを舞台とする物語の音楽化もある。

 このレコードでは、秋を主題とした地歌・箏曲のうち、秋風物・砧物といわれるものを徐いて、虫・月・紅葉・菊を題材とするものをそれぞれ一曲ずつ選び、また小督の物語に基づくものを二曲、那須野の説話を一曲、そして、日本の韻文学の最古典たる『古今和歌集』の秋の部に拠るものを一曲と選んで、箏と三弦仁よって、日本的な秋のしらべ・秋のひぴきを、心ゆくまで味わいうるものとした。演奏は、地域・流派の別にとらわれず、諸派の分担または合同という形となっている。これによって、秋という季節感にひたるとともに、地歌・箏曲のさまざまで徴妙繊細な特質をも楽しんでいただきたい。
 

四季の箏曲 秋のしらべ

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update October 21, 2000