「富山清琴師の端歌の世界」

(抜粋)
富山清琴 端歌の世界 1986/04
                           平野健次
   (C)平野健次邦楽文庫 
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 まず、地歌における「端歌」という言葉の初見は、『松の葉』(一七〇三)であろう。その第三巻は、端歌を集成したものである。その中には、現行される「こんかい」「忘れ唱歌」(『箏曲、地歌の世界』参照)なども含まれてはいるが、この時期にその判然とした分類基準ができていたかどうかは分からない。むしろ、組歌や長歌のように盲人音楽家の伝承体系に編入されたもの以外の、芝居・遊里などでの流行歌謡の総称として、「端歌」を認めたい。つまり、『松の葉』第三巻収録曲のすべてが、地歌としての伝承曲とは限らないのである。したがってその収録曲の詞章に手付けして、いかにも地歌として伝承されてきたかのように主張して発表されたものを信ずるわけには行かない。
 やはり盲人音楽家の伝承・創作において、「端歌」が顕著となるのは、年代の明らかなものでは、寛延四年(一七五一)以降の『糸のしらべ』『糸の節』類の歌本に収録される楽曲の成立以降であると見たい。ただし、歌本刊行時の成立とは限らず、当然、その前代の成立の曲も含まれる。すなわち、元禄期に芝居の場において成立したような曲も、「芝居歌」として、盲人音楽家の伝承体系に組み込まれて、後代には「端歌」と扱われるのである。寛延ごろの歌本に収録されているものには、こうした元禄以来の、ものもかなり含まれる。 
 ここには、そうした元禄以来寛延ごろまでのものを「端歌」の蒙昧期のものとして、まず最初に扱いたい。すなわち「妹背川」「おちゃめのと」「水鏡」の三曲は、こうした古曲と認めて、まず一の1面に収録する。(後略)

富山清琴 端歌の世界

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September 1,1999