文化的活動記録
今月観た映画
- 野田版鼠小僧
- 作・演出:野田秀樹 出演:中村勘九郎、中村福助、中村橋之助
- 強欲でけちな棺桶屋が義賊として人気の「鼠小僧」になってしまう話。
シネマ歌舞伎と題した歌舞伎舞台の映像化第一弾。
実際、HDカメラで撮影したというデジタル映像は非常に鮮やかで見づらいことはない。
音響もサラウンドに編集されており、観客席の声もきちんと臨場感がある。
作品は歌舞伎と言うよりは野田秀樹の舞台作品といった感じで分かりやすく、場面転換や役者の名前がスーパーで表示されるため、歌舞伎の初心者には最適だろう。
歌舞伎ならではの舞台装置も見どころ。それにしても勘九郎は汗をかきすぎ。
(12/24、東劇)
- 珈琲時光
- 監督:候孝賢 出演:一青窈、浅野忠信
- 都電の走る東京の住宅街に住む女性フリーライターの話。
田舎の両親や男性の友人ともうまく暮らしているが、妊娠をきっかけにさざ波のような波紋がたってゆく。
叱ろうにも言葉の出ない父親と継母、想いを寄せていながら言い出せない鉄道ファンの青年。
そんな周りの人々の心の動きを、少ないセリフで描いてゆく。
現代でありながら懐かしさを感じさせる東京の風景は意外性を持ちながらたおやかに流れていく。
小津安二郎へのオマージュとして作られた作品というが、多分にその雰囲気は十二分に出ていると思われる。
(9/20、テアトルタイムズスクエア)
- MASK DE 41
- 監督:村本天志 出演:田口トモロヲ、松尾スズキ、筒井真理子、伊藤歩、蒼井優
- リストラされたサラリーマンが、プロレス好きが高じて自らプロレス団体を設立する話。
再婚同士の夫婦が直面する家庭崩壊の姿などを織り込み、ホームドラマな一面も見せるが、つまらない涙ものになっていないのはひとえに終盤にかけての本格的なプロレスシーン。
プロレス興行にまつわるドタバタとホームドラマの絶妙なバランスとテンポの良さはうまさを感じる。また、ベタベタなホームドラマのシーンでもBGMはプロレスっぽいラテンのリズムであることも味わい深い効果を生み出している。
役者陣は実力者ばかりのため、安心して見ることができる。ただし、クレジットに2001と出るように、撮影自体は古いものだったようで、何人かは明らかに若いし、プロレスラーの中には鬼籍に入ったり再起不能になったりする人の元気な姿も見られる。
プロレス好きにはそうしたレスラーの姿を見るだけでも価値はあるかもしれない。
(9/12、K's Cinema)
- デビルマン
- 監督:那須博之 出演:伊崎央登、酒井彩名、伊崎右典
- 有名コミックを原作としたアクションスペクタクルなアイドル映画。
主人公はデーモンと呼ばれる異生物に憑依されるが、人の心を持ち続けることができ、人類のために戦うデビルマンとなる。
ストーリーは記憶にあるコミックに沿ったもので単純なヒーローものだったアニメ版とは異なる。
コミック原作を実写化する場合は、リアリティのない設定を無視するか、笑えるくらい忠実に再現するかの判断が必要となる。
通常は両方並び立つことはなく、無理をするとシリアスなまま突っ込みどころの多い作品となってしまう。
この作品はその好例と言える。すごいすごいと前評判のCGも、へたれな若い役者のセリフと気合いほどには動かないアクションを覆い隠そうとしているようにしか見えない。
風景も廃墟のシーンは素晴らしいCGだが、人がいるのはいつも変わらぬショッピングモールであるなどスケール感の大きさが実写部分で追いついていない。
いっそのことCGシーンだけ残して実写だけまったく違う役者と監督で取り直してはいかがか。
ここ数年では一二を争うくらいの大外し映画。
(9/5、東京国際フォーラム<試写会>)
- 華氏911
- 監督・脚本・制作:マイケル・ムーア
- ブッシュ米大統領を取り上げたドキュメンタリー。
とはいえ、映像のほとんどはどこかのテレビ映像の流用であり、自ら真相を暴くという構成にはなっていない。
すでに知られていることを時系列的に並べて矛盾を浮かび上がらせる手法は、安易という見方もできるが、その多くが一般に知られていないというアメリカの現実を突きつけているようにも思える。
表現の仕方は辛辣でウィットに富み、悲しみを誘う場面もあるなど、感情の引き出し方は確かにうまい。
ただし、日本人としてこの作品を見て思わなければならないのは、この国のリーダーはどうなのか、と言うことだ。決して関係のない他の国の出来事として楽しむものではないし、このような表現が認められることを羨ましがるだけでは意味がない。
ドキュメンタリーとして分かりやすく作られたものではあるけれど、その視点は誰もが持たなければいけないものであり、決して作品として評価されるだけであってはいけないと考えるのだ。
(8/24、銀座テアトルシネマ)
- 誰も知らない
- 監督・脚本・編集:是枝裕和 出演:柳楽優弥、北浦愛、木村飛影、清水萌々子、韓英恵、YOU
- 父親の違う4人の子供たちが母親に捨てられて東京の真ん中で生きていく話。
出生届も出されず、学校にも通っていない子供たちは、母親に外に出てはいけないと言い含められており、決して広くはない部屋を唯一の生活場所として生きていく。
ただひとり外へ出ることを許されている長男の少年は、そんな聖域と外界とを行き来する。
母親の不在を確信し、外界の誘惑や堕落を目の当たりにしながらも、彼はきょうだい4人の聖域を守ることを選択していく。
聖域を楽しく守っていくきょうだいの姿ははかないほど純真で、雑草のようにたくましい。
それでも外界を知っている少年は、聖域との間を行き来せざるを得ず、大人への扉を開け始める。
主演の柳楽優弥は作品中と主人公と同じ時間を共有しており、その姿はやはり少年の一時期の煌めきを捉えたものであるが故に貴重であるといえる。
それは取りも直さず、監督の手法に依るものであり、世界的な賞を受賞した彼が今後も同様の煌めきを見せられるとは限らない。
ラストの分かりやすさは意外だったけれど、ちょっと「台風クラブ」を思い出した。
(8/23、テアトルタイムズスクエア)
- 丹下左膳 百万両の壺
- 監督・撮影・編集:津田豊滋 出演:豊川悦司、和久井映見
- 隻手隻眼の剣士・丹下左膳が活躍する痛快人情時代劇。
矢場の用心棒として呑気に暮らしている丹下左膳だが、身寄りをなくした子供を引き取ったことから壺を巡る騒動に巻き込まれる。
基本は長屋ユーモアもので引き取った子供をどうするかと言ったやり取りがユーモラスに描かれている。
そこに程よくチャンバラシーンも散りばめられ、安心して楽しめる作りになっている。
長身の豊川悦司は格好良いものの、室内では少々狭い印象。べらんめえ口調と調子の良さはどうにも慣れなかったが、終盤にはなぜか見苦しくなくなっていた。それは啖呵を切る和久井映見も同様。
脇では野村宏伸と麻生久美子の道場主夫婦が良い感じを出している。
チャンバラシーンだけでなく飽きさせないだけにテレビ放映などではウケそうな作品。もしかするとシリーズ化もあり得るかもしれない。
(8/7、恵比寿ガーデンシネマ)
- スチームボーイ
- 原案・脚本・監督:大友克洋
- 19世紀のイギリスを舞台にした少年冒険活劇アニメ。
当時の最先端技術である蒸気機関を究極まで利用した発明家一家を中心に、その技術を軍事利用しようとする財団や国の思惑の中で親子の対立を描いている。
スケール感は同監督のAKIRAにもひけをとらず、旧世代の技術をモチーフに使いながらうまく圧倒的な迫力と恐怖感を描き出している。
ストーリーは分かりやすく、迫力あるシーンが続くため飽きさせることなくうまく構成されている。
その分、夢中にさせる要素には欠けるかと感じる壮大な親子喧嘩の話。
(7/24、オデヲン新宿)
- 海猿
- 監督:羽住英一郎 出演:伊藤英明、加藤あい
- 海上保安庁の潜水士を目指す男たちを描いたコミック原作の映画化。
50日間に及ぶ厳しい研修の中で、男たちは鍛えられ精神的にもたくましくなっていく。
肉体的な鍛錬はもちろん、精神的な労苦を味わうくだりは青春ものの王道であり、原作の泣かせどころをうまく描いている。
とはいえ、主人公が二枚目すぎ、ヒロインが普通に可愛すぎるところが原作のテイストとは異なり残念なところ。
もっと生と死をモチーフにした命のやり取りが原作の持ち味であっただけに、そのままでは暗くなりすぎるのかもしれない。
次回作の制作も決まっているそうだが、このままでは国産パニックムービーとしての位置づけになってしまいそうで、それなりに売れるようになるだろうけれど、少々心配。
(7/10、日劇PLEX)
- ラブドガン
- 監督・脚本:渡辺謙作 出演:永瀬正敏、宮崎あおい、野村宏伸、新井浩文、岸部一徳
- 両親を亡くした少女と仲間から逃げている殺し屋の話。
事故で怪我を負った殺し屋は少女に助けられ、医者に襲われている少女を助ける。
少女は両親が亡くなる原因となった父親の愛人を殺すように殺し屋に依頼する。
それが前半で、後半は殺し屋同士の対決がメインに描かれる。
銃弾の色が撃つ人間の感情で変わるなど面白い設定はあるものの、基本はありがちな殺し屋もの。
凝ったカメラワークは特色だが、あまり気持ちの良いものではない。そのせいか、せっかくの役者陣も生かし切れていない印象がある。永瀬はあまりに典型的な配役で少々鼻につくようになってきた。宮崎あおいはうまく生長している感じ。タバコを格好良く吸っている姿は魅力的に映る。
(7/3,、テアトル新宿)
- キューティーハニー
- 監督:庵野秀明 出演:佐藤江梨子、市川実日子、村上淳
- 普段はとぼけた女の子が変身して悪の組織と戦う痛快アクションコメディ。
有名マンガとアニメが原作であるため、実写化での変貌が危惧されていたが、良い意味で原作の持ち味をそのまま映像化しているものとなっている。
そこではチープなCGも、まったくリアルでない設定も許されてしまう。その世界観を許容できなければ難しい作品だろう。
そうした滑稽な役柄を個性的な役者陣が何のてらいもなく演じているのがすがすがしく楽しい。
主役の佐藤江梨子はスタイルだけで、アクションは今ひとつ。これなら釈由美子でも良かったかと思いもしたが、ハニーの脳天気な性格は佐藤江梨子ならではと言えるだろう。
(6/20、銀座シャンゼリゼ)
- ジャンプ
- 監督:竹下昌男 出演:原田泰造、牧瀬里穂、笛木優子
- 恋人が突然姿を消してしまった男の話。
彼女の姿を追い続ける内に、偶然が重なっているだけなのか、明確な意思で自分の前から消えたのか、謎が増していく。
その上で相手のことをよく知らないままでいたことに男は思い悩む。そして、日々が流れ、意外な真実が明らかになる。
主演の原田泰造は無難にこなしている印象。あまりセリフのない静かな役柄だけれど、内に秘めた力強さを感じさせているのはアドバンテージか。
(5/22、テアトル新宿)
- CASSHERN
- 監督・撮影監督・編集:紀里谷和明 出演:伊勢谷友介、麻生久美子、寺尾聰、唐沢寿明
- 戦争による混乱が続く世界に生まれた新造人間たちの戦いを描いた作品。
新造細胞という人間の臓器を作り出せる新しい細胞の研究中に謎の意思によって生まれた新造人間が虐殺に対して人間に牙をむく。
一方、新造細胞の研究者は戦死した息子を新造細胞で生まれ変わらせ、戦いが始まる。
人間たちの方にも軍事国家内のクーデターや人種問題が描かれ、生まれ変わったキャシャーンはその中で翻弄されていく。
名前の出るほぼすべての登場人物にエピソードがあり、伏線も張られ、正直言って盛りだくさん。
そのせいで主人公はあまり目立たなくなってしまっている。
映像は監督の世界観が十分に出ているが、そのほとんどがCGであるために開放感は薄い。
少々長めの作品だが敵役が生まれるところから始まるなど独自性もあり飽きさせることはないだけに、もっと長くても良いのかと思う。
(5/15、丸の内ピカデリー2)
- アップルシード
- 監督:荒牧伸志
- バイオロイドと呼ばれるクローン人間が人口の半分を占める未来都市で活躍する女戦士の話。
非核大戦の戦場で活躍していた主人公は平和な都市に連れてこられ、警察組織の中で役割を見出す。
そうした導入部から、バイオロイドを巡る思惑、都市を統べる立法院と行政院の関係、警察組織と軍の対立などが提示される。少々説明っぽい部分もあるが、非常に分かりやすく、原作を読んでいなくとも十分に楽しめる。
この作品の特長は全編に渡って3D・CGを使って描かれていること。すでに一般的なアニメでもメカなどはCGで描かれることも珍しくないため違和感はないが、キャラクターの出来は気になるところ。
アクションシーンは何ともないが、表情や仕草に関しては若干気持ち悪さが残る。ヘンにリアルな人間にするのではなく、アニメキャラクターをベースに動かしているのが成功の秘訣なのだろうが、その分、顔の動きは人形がクネクネ動いているような気味悪さがある。
とはいえ、パンフレットを見る限り、この手法によって制作期間は意外に短くなっているようだし、メリットが明確ならば今後も同様の手法は採用されていくだろう。
それはそれでアリだなと思えるだけの出来は認められる。
(5/4、シネリーブル池袋)
- 恋人はスナイパー
- 監督:六車俊治 出演:内村光良、水野美紀
- 女性刑事と元犯罪組織の中国人スナイパーの話。
無差別殺人により全国民を人質に取ったと脅迫をしてくる犯罪者に対し、政府は服役中の元スナイパーに協力を求める。
TVドラマの映画版と言うこともあり、冒頭で大まかな人間関係が説明されるが、特に違和感はない。
大がかりな犯罪の割に、容疑者は早々に判明してしまい、以降は犯人との対決が延々と続く。
最後はアクションの連続で、どちらかと言えば水野美紀の頑張りの方が目立つ。
基本的に警察は何もしていないのだが、最近の流行りとしてはアクションの中に警察が真相に迫っていくシーンを挟み込んだ方がテンポが良かったのではないかと感じた。
ラストシーンが観た劇場の前だったのはご愛敬。
いかりや長介の遺作となったが、特に恥じるものにはなっていなかったのが幸い。
(5/1、渋谷東映)
- イノセンス
- 脚本・監督:押井守
- 近未来、愛玩用アンドロイドが暴走して所有者を殺害する事件を巡る話。
95年公開の『攻殻機動隊』の続編という位置づけになっており、独立した話となってはいるものの、やはり前作を見ないことには難しい面も見られる。
ストーリーは前作に引き続き、生命とは何か、情報化の中でその意味合いが薄れていくことを事件に絡めて述べている。
この作品の魅力はそうしたことを扱う膨大なテキストにあるのだが、どうしても最新の映像技術に注目が集まってしまう。
確かにそれらの映像は見事であり、効果を発揮しているシーンもあるのだが、どうしてもアニメ絵のキャラクターと違和感があるのは否めない。
テーマが変わらないだけに、衝撃度は前作には敵わないというのが正直なところ。
(4/10、シネフロント)
- 花と蛇
- 監督・脚本:石井隆 出演:杉本彩、石橋蓮司、野村宏伸
- 夫の仕事上のトラブルのためにセレブ向け会員制裏クラブで凌辱の限りを尽くされる女性の話。
杉本彩の鍛え上げられた、それでいて決して筋肉質ではない肉体が惜しげもなく曝される。それにぼかしが一切ないのは別な意味で驚きがある。
ストーリーは原作であるSM小説の王道をベースにしているだけに、令夫人であるとか、通常使われないような滑稽な表現が含まれているが、それも含めてSM小説という世界を描いているとすれば、丹念かつ誠意を持って描かれていると言える。
また会員制クラブでの凌辱は基本的にSMの部類に入るものだが、均整の取れた杉本彩の肉体とカメラワーク、そして音楽がその映像をハイレベルなものに昇華させている。それはあたかもSMという文化を捉えた芸術作品であるかのように。
ポルノとAV(アダルトビデオ)に差があるのだとすれば、これは紛れもなくポルノグラフィと呼ばれるものであり、それだけの説得力を持っている。
ちなみに懐かしさを感じさせる野村宏伸という配役は石井隆監督の基で変貌を遂げるかとも期待していたが、相変わらずであった。
(4/27、シアターイメージフォーラム)
- eiko
- 監督:加門幾生 出演:麻生久美子、沢田研二
- 人を信用するあまり騙されやすい女の子の話。
その純真さのあまり、騙していた男たちは次第に態度を変え始める。
よくありそうな話といってしまえばそれまでのストーリーを成り立たせているのは主役の麻生久美子の魅力によるところが大きい。役柄では老人とされている沢田研二はそんなに歳でもないだろうと思いながらも何とも言えない緩さが心地よい。
(3/20、テアトル池袋)
- 盲獣vs.一寸法師
- プロデューサー・脚本・監督・撮影:石井輝男 出演:リリー・フランキー、平山久能、リトル・フランキー、塚本晋也
- 旧き東京を騒がす猟奇殺人事件を追う探偵もの。
江戸川乱歩の原作をモチーフにしただけあって、その雰囲気は良く出ている。
画面の端々ににじむチープさは、怪奇小説としての世界観を良く表していると評価しても良い。
ただし、旧き東京を低予算で撮る苦労は相当なものであったことは無理矢理なシーン構成に表れていて同情を誘う。
全編に漂う独特なエロさは面白い。
(3/14、渋谷シネ・ラ・セット)
- 恋する幼虫
- 脚本・監督:井口昇 出演:荒川良々、新井亜樹、伊勢志摩、村杉蝉之介、唯野未歩子、乾貴美子、松尾スズキ
- 三流マンガ家と女性編集者の関係をグロテスクに描いた恋愛もの。
女性編集者の態度が気に入らなかったマンガ家は、彼女の顔を傷つけてしまう。お互い職を失い、マンガ家は思い直して彼女を訪ねる。
そこで見た彼女の顔の不思議な傷口に恐れおののきながらも、謝罪の気持ちから彼女の言うことを聞いている内に、マンガ家はいつの間にか彼女に惹かれていく。
冒頭の回想シーンから始まるグロテスクな描写は基本的にセックスの隠喩となっている。そのことは作品中のセリフにも出てくる。それを考えれば、傷口に纏わる描写も同じものと見ることができる。その意味では本当の意味でのエログロとも言える。
とはいえ、どんなに残酷なシーンでもシリアスなシーンでも、主役二人のキャラクターによって脱力系のほのぼの感が漂ってしまうのが、普通の作品とは異なるところ。ちょっと卑怯な気もするけれど。
(3/10、テアトル新宿)
- ゼブラーマン
- 監督:三池崇史 出演:哀川翔、鈴木京香、渡部篤郎
- さえない学校教師が昔のTVヒーロー、ゼブラーマンになっていつの間にか宇宙からの侵略者と戦う話。
設定からして荒唐無稽だが、それを裏切らないチープな防衛庁や風景が序盤立て続けに現れ、いつまで続くのか心配になるほどのゆるさがそこにはある。
しかし、中盤から主人公が説明なし、問答無用でヒーローになっていくことでストーリーは動き始め、怒濤の終盤に流れ込んでいく。
その直前に、この作品でもっともゆるいシーンを持ってくるところなどはうまさを感じる。そこから一気にテンションは上がり、ラストまで途切れるところがない。
繰り返すが、ストーリーが荒唐無稽とはいえ、それでも最後まで見せることができる力はやはり評価すべきだろう。
同じ脚本家の作品「ドラッグストア・ガール」を観たあとでは、それを強く感じる。
(2/29、丸の内東映)
- アドルフの画集
- 監督・脚本:メノ・メイエス 出演:ジョン・キューザック、ノア・テイラー
- 若き日のアドルフ・ヒトラーが画家を志しながら、次第に政治に傾倒していく姿を描いた作品。
ユダヤ人の画商という架空の人物との交流を描くことで、反ユダヤ主義を叫ぶ政治活動を芸術活動のひとつとして捉えていたという、ひとつのヒトラー像を呈示している。
そうした試みは取りあえず成功していると思うし、大事なことだと考える。プライドばかりが高く、独りよがりで怠け者というダメなアーティストの典型として描かれているヒトラーは、とても人間らしく、誰でもがそうなり得る可能性を感じさせる。
その後の彼の行いは決して許されるものではないが、彼が特別だったと考えることは、ある意味崇拝につながることであり、本当に必要なのは彼がつまらないただの人間であったということと彼を変えてしまったものの検証作業なのではないだろうか。
そんな試みは残念ながら本国ドイツでは認められていないようだ。それはもったいないことだと思うし、今でも彼を嫌悪する感覚はなかなか伝わりにくい。
ただ、オウム真理教の教祖・麻原の若い頃を描いた作品が上映できるかと尋ねられれば、なるほど難しいというのは分からないでもない、そんなことを麻原の判決の翌日に観たことで考えた。
(2/28、テアトルタイムズスクエア)
- 伝説のワニ ジェイク
- 監督・脚本:犬童一心 出演:村上淳、柴咲コウ、麻生久美子、市川実日子、田辺誠一
- 世界中で目撃談のある謎のワニ、ジェイクを追うジャーナリストが目撃者の話を集めて回る話。
世界中の新聞に目撃情報募集の広告を出したジャーナリストは、コンタクトのあった目撃者に実際に会い、その話を聞いて回る。
とはいえ、ワニの正体は話の本筋ではなく、日本人の役者陣が演じる世界各国の目撃者の談話が中心。そのキャラクターの置かれている状況を目撃者の談話という形で表現し、その上で謎のワニを目撃する心理状況を想起する。
そのためのテクニックとして、インタビュー形式の演技と、ワニの目撃シーンを山村浩二のアニメーションが使われている。
国や時代背景を交えながら、紛争や差別を静かに訴えていく手法は好感が持てる。
惜しむらくは、映画館内の温度が高すぎて、23人の目撃者の3分の1くらい寝てしまったことだ。野田秀樹が出ていた記憶がない。
(2/25、ユーロスペース)
- ドラッグストア・ガール
- 監督:本木克英 出演:田中麗奈、柄本明、三宅裕司、伊武雅刀、六平直政、徳井優
- 女子大生と田舎の商店街の商店主5人の話。
ふとした弾みで田舎町にできたばかりのドラッグストアのアルバイトを始めることになった女子大生の魅力に参ってしまった冴えない商店街の中高年商店主5人は、女子大生がラクロスをやっていることを知り、仲良くなるきっかけにと自分たちもラクロスを始める。
そもそも、このストーリーの設定として中高年を虜にする魅力が女子大生役の田中麗奈になければならないのだが、これがまあ微妙なところ。万人受けする美人となった田中麗奈には、小悪魔系にも癒し系にもなり切れない中途半端さが残る。
また、設定自体は面白いけれど、町おこしモノにするのか、スポーツモノにするのか、最後まではっきりせず、どちらにしても中途半端な出来となっている。
コメディだからと言えば聞こえはいいが、コメディでもラストさえ締まれば感動を呼ぶという例が「ウォーターボーイズ」があるだけに、こうした主役の魅力だけで良しとしてしまう作品は評価できないのだった。
(2/22、新宿ジョイシネマ3)
- のんきな姉さん
- 監督・脚本:七里圭 出演:梶原阿貴、塩田貞治、大森南朋
- ひと組の姉弟の物語。
婚約者のいるOLである姉、この世の果てから電話をかけてくる弟から物語は始まる。
やがて二人の関係を描いたとされる本の世界と現実が絡まるように交差していく。
単純にストーリーだけ追いかけていくと、いくつもの矛盾があり、時系列もバラバラ。それが世界観と言ってしまえばそれまでだけれど、それを受け入れられるだけの出来になっているかは疑問。
二人の関係をモチーフとしているのに、ラブシーン、特に女性の肌の露出が排除されているのは意図的なものらしいが、いささかストレスがたまる。
二人の感情を表したという音楽も前衛演劇のようで、少々耳障り。
いずれも新しい試みにチャレンジしていることは分かるが、まだまだこなれていないような印象を受ける。
同様の感想は、併映の短編「夢で逢えたら」(出演:安妙子、大友三郎)がセリフの音声のみを省いた印象にも通じる。
(2/13、テアトル新宿)
- この世の外へ クラブ進駐軍
- 監督・脚本:阪本順治 出演:萩原聖人、オダギリジョー、MITCH、松岡俊介、村上淳
- 戦後日本を舞台に、占領米軍を相手にジャズで食べていこうとしている若者たちの姿を描いた作品。
戦後日本の様子を描くことは、余程の資本がないともはや難しいことは自明だが、それを踏まえれば頑張っている方だろう。
ストーリーはと言えば、メンバーそれぞれにエピソードがあり、誰が主人公かは明確にされていない。それでいて、それぞれのエピソードが交わることがなく、言ってみれば5人分の5本のストーリーが展開されているようなもので、散漫な印象も受ける。
また、バンドが段々上達していくのがストーリーの骨格なわけだが、素人にはどれがどこまで下手で上手いのかが分かりにくいのが欠点。
(2/7、丸の内ピカデリー2)
- パラサイトドールズ
- 監督:中澤一登、吉永尚之
- 2030年代の近未来・東京を舞台にした、「ブーマ」と呼ばれる人造人間を巡る物語を描いたアニメーション。
「ブーマ」を巡る犯罪を扱うA.D.POLICEの、さらに特殊任務組織"ブランチ"のメンバーを中心に、時系列に3話のエピソードで構成される。
主人公たち側にロボットや秘密兵器のようなアイテムはなく、基本的には硬派なハードボイルド。
舞台についての余計な説明はないものの、エピソードを重ねることで雰囲気や様子を伝えているのは脚本の力か。
銃撃戦も少なく、陰謀を暴いていく形のストーリーは十分楽しめる。
(1/24、シネクイント)
- ミトン
- 監督:ロマン・カチャーノフ
- 1960年代から70年代にかけて製作されたソ連の人形アニメーション。
その細やかな動きは目を見はるものがある。
ストーリーは母親と子供の関係を通して世の中を見ているようなもので、当時のソ連の状況と重ね合わせてみると興味深い。
(1/17、ユーロスペース)
- 半落ち
- 監督:佐々部清 出演:寺尾聰、原田美枝子、柴田恭兵
- アルツハイマー病に冒された妻を殺してしまった警察幹部が裁かれるまでを描いた話。
犯行から自首までの空白の2日間が謎として残るにも関わらず、警察・検察の政治的構図の中で事件は粛々と処理されていく。それぞれに携わった者にやりきれない何かを残しながら。
そうしたやり切れなさが、事件の処理に従って、刑事、検事、弁護士、裁判官へと伝わってゆく。それに報道記者が絡んでゆくことでリレーは徐々にひとつにつながってゆく。
原作は優れたミステリー作品として評価が高いらしいが、果たしてこれがミステリーだろうかと謎が解けるラストまで観ると正直思わざるを得ない。
とはいえ、きちんと涙を誘うところまで持って行く構成力は見事。少々あざといところもあるけれど。
(1/12、丸の内東映)
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「茄子 アンダルシアの夏」
第56回カンヌ国際映画祭[監督週間]に出品された高坂希太郎監督のアニメーション作品。初見。
スペイン・アンダルシアを舞台にした自転車ものということで劇場で見たかったが見逃してしまったもの。
あまり情報を入れていなかったので、茄子が人の名前かも、とか、自転車でのスポ根ものかと想像していたが、いずれも良い意味で裏切られた。
47分という短い本編の中で、ある一日のレースの模様とそこに関わる人々の様子をバランス良く描いている。
それでいて、実写に限りなく近いカメラワークは多分にアニメーションとしては高等テクニックを使っていると思われ、そうしたさりげなさも好感が持てる。
特典は告知と予告編、エンディングのプロモーションビデオだけで少将物足りない。
- 1月
「2003 J LEAGUE YAMAZAKI NABISCO CUP」
2003年のJリーグヤマザキナビスコカップの記録DVD。
タイトルこそ公平な印象だが、明らかに初優勝した浦和レッズのための作品
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