55円普通切手 まりも

            

 

阿寒湖に生息する天然記念物「まりも」を描いた普通切手が、昭和30年代から50年代にかけて存在しました。どちらかというと特殊な用途に使われる切手であったため、製造量もあまり多くはなく、一般の人にはあまり認識されることのなかった切手ですが、専門収集の観点からはきわめて興味深い収集対象と言えます。ここではこの普通切手まりもの面白さを、さまざまな角度からお伝えしようと思います。

この普通切手は、昭和31年に登場した「旧まりも」と、昭和44年に登場した「新まりも」の2種に分けられます。少しでも切手を集めたことのある方なら、両者の違いはすぐに認識できるでしょう。「新まりも」の方には、国名がローマ字で「NIPPON」と入れられています。万国郵便連合の規約により、昭和41年以降に発行されたすべての日本切手にローマ字国名が入れられることになり、普通切手についても順次ローマ字国名を入れた新切手に切り替えられた結果です。

少し詳しくこれらの切手を調べていくと、この新旧のまりも切手は、単にローマ字のあるなしだけでなく、さまざまな違いがあることに気づきます。またそれらの切手の果たした役割についても、時代の違いを反映した大きな違いがあります。この記事でも、新旧に分けた上でそれぞれの収集の面白さを伝え たいと思います。

本記事は2005年版以前の「日専」にもとづいて書かれています。記事中で指摘した問題点の大半は、2006年版において解消されています。(2006.11.05記)


第1部 旧55円まりも

わが国初の本格的グラビア多色刷り普通切手が、旧55円まりも(1956年5月15日発行)です。ドイツから輸入された新鋭グラビア多色機による「こいのぼり」や「ビードロ」といった多色刷り記念切手が華々しく登場する一方で、普通切手でもこの新鋭機による製造が始まったわけです。単色刷りの「8円かもしか」、2色刷りの「5円おしどり」で足慣らしをしたあと、いよいよ多色刷りによるこの55円切手が登場となりました。

しかしこの切手の製造には並々ならぬ苦労があったようで、グラビアスクリーンや目打形式などに、その苦労の跡が残されています。第1部では、製造面を中心にこの旧まりも切手のさまざまな姿をお伝えしましょう。

 

1.グラビアスクリーンの角度バラエティ 

小さな点々の集合によって階調豊かな表現を実現するグラビア印刷ですが、この点々の並ぶ向きやピッチには、切手を製造した時代の特徴が隠されています。ピッチは1インチ(25.4ミリ)あたりの点々の数(線数)、向きは点々の並びと水平線のなす角度で表現します。肉眼で判別するのは無理ですが、15倍以上のスケールつきルーペを使うと、その特徴を暴きだすことができます。

日専によればこの旧55円まりもは黒・緑・青のグラビア3色刷りで、スクリーン線数はすべて260線、スクリーン角度は青45°、黒90°、そして緑には69°、64°、57°、54°の4種のバラエティが存在するとされています。この4種のスクリーンは異なる製造時期に対応していることから、その分類を行うことによって切手の製造時期を判別できるという意義があります。その詳細を豊富な図版を使って解説いたしましょう。(詳細はこちら

 

2.緑45°の謎 

日専で4種に分類されている緑スクリーンですが、その4種を求めて切手店の貼り込み帳をあさっていると、そのどれにも該当しない切手に出くわして、首をひねる人も多いはず。この切手の製造末期、昭和36年頃の消印のついた使用済切手をルーペで調べると、日専記載の4種のどれにも該当しない緑45°という角度のスクリーンが見られることがあります。というより、その頃の消印のついた使用済では、その過半に45°スクリーンを観察することができます。

しかもこの緑45°を探していると、2種類の角度の併存している「緑69°+45°」という複合スクリーンの切手も存在することに気づきます。これらの45°スクリーンの実情について、詳しく解説いたしましょう。(詳細はこちら)

 

3.この切手は本当に3色刷りか 

前項でふれた「緑69°+45°」という複合スクリーンの存在は、素直に考えると緑の刷色が2種あることを意味します。黒、青と合わせると、この切手は4色刷だったということになります。しかし、カタログに長い間3色刷りと記載されていた切手が実は4色刷りだったなどということが、本当にあってもよいものでしょうか。この問題を、少し詳しく考えてみましょう。(詳細はこちら)

 

4.目打形式のいろいろ 

「いろいろ」と言ってもこの切手の目打形式は2種、細かく分類しても3種しか報告されていません。この切手を印刷した最新鋭のゲーベルグラビア機では、ロール状の印刷用紙に連続的に切手を印刷することができますが、印刷だけでなく目打作業も連続的に行い、あとから1シート分ずつにカットするようになっていました。この方式はそれまで使われていた輪転式の凸版印刷機でも同様ですが、この新型印刷機には1段ずつの目打を連続的に施すという、新方式の連続櫛型目打穿孔機がついていました。1シート分を一気に穿孔するそれまでの全型目打に比べて小型で済む反面、カット後に1シートずつ穿孔する伝統的櫛型目打に比べれば、格段に作業能率が上がります。しかしこの目打穿孔システムを使わずに、古い櫛型目打で穿孔された切手が存在するのが面白いところです。(詳細はこちら)

 

5.いろいろな使用例

この旧まりも55円切手は、あまり需要の多い切手ではありませんでした。実質的な使用期間も、昭和31年からの約5年間とあまり長くなかったため、使用例としても種類は多くありません。それでもそれらの中には、ぜひ入手したい魅力的なものがいくつかあります。(詳細はこちら)


第2部 新55円まりも

1961年6月の料金改定で55円切手は不要になり製造も中止されましたが、その後1966年7月改定によって再び55円という料金(定形外便200g、第3地帯あて航空ハガキ)が発生しました。しかしこの新料金に「旧まりも」が使用された例は、ほとんど見ることができません。ローマ字国名入りの新切手も登場が遅れ、料金改定から3年たった1969年になってやっと登場しました。

 

1.黒2色説  

この新55円まりも切手では、すべての色のスクリーンが45°に統一されて、面白味に欠けることになりました。目打は細かく分類しても「逆二連1型」のみ。銘版や紙の変化もありません。新まりもの場合も日専では、旧まりも同様3色刷りと記載されています。色調は多少異なりますが、やはり黒・緑・青の3色です。

しかしこの新まりもについても昔から、旧まりもと同様の黒2色説があります。この新まりも切手の製造面で唯一興味深い点は、この黒の正体と言ってよいでしょう。黒が2色ということは、すなわちこの切手が4色刷りであるということです。(詳細はこちら

 

2.使用例  

この新まりも切手の実質的な製造期間は、1969年の新発行時から1976年1月の料金改訂時までと言えます。使用面から見ると、1972年1月までの第1期と、それ以降1976年1月までの第2期、そしてそれ以降の「残り物使用期」とに分かれます。(詳細はこちら