リーフづくりセミナー

 

この部屋の目的は、入手したマテリアルや完成したリーフの紹介というよりも、リーフづくりそのものの楽しさを実践的に体験できるような場を提供することです。とりあえず1回限りの単発記事としておきますが、できれば続編をと考えています。


第2次動植物国宝シリーズ45円陽明門

2006.03.04

表題の切手を材料とした伝統郵趣コレクションをテーマといたしましょう。45円陽明門のオフペーパー切手で構成したリーフです。まずは、マイアルバム中に現存する2リーフをご覧いただきます。これは、JAPEX'01に出品した作品中のリーフに、その後の入手品を加えて再構成したものです。

A案 : 未使用・使用済を混在させて、各時代ごとの姿を表現

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この2リーフでは、まず時代優先で初期・中期・後期に分類した上で、それぞれの時代の切手の姿を未使用・使用済混在で表現しています。初期・中期・後期とは製造面による分類か使用面による分類かと問われれば、前者ということになるでしょう。

第1リーフの1段目に貼った初期切手は、粗白紙の用紙で特徴づけられます。刷色は濃い青ですが、用紙のせいでくすんだ感じに見えることが多いようです。多数の使用済切手を調べると、昭和20年代の消印のついた切手は、おおむねこの特徴をもっています。上のリーフでは、未使用の銘つきブロックの両側に、和文印(昭和27年:発行年)と欧文三日月印(1953年:昭和28年)の使用済単片を配しました。この切手の発行目的は1951.11.1料金の書留書状用ですが、新額面の切手であるため発行当初からかなり使用されています。発行年の使用済切手も、それほど難しいわけではありません。

第1リーフ2段目以降には、昭和32年頃に登場した白紙の切手(中期切手)をまとめました。まずは未使用で第2コーナーの田型を貼りました。用紙の違いは単片切手でも表現できる要素ですが、このようなブロック、特に耳つきのブロックを使うと、白地の部分が多いために用紙の違いを明確に表現することができます。スキャン画像が現物を忠実に反映しているとは言えませんが、1段目の粗白紙ブロックとの違いは、何とかこの画像でもわかっていただけるかと思います。

中期切手の未使用田型の下には、使用済切手を5点貼りました。左からD欄入り和文櫛型印(33年)、和文ローラー(36年)、普通の和文櫛型印(35年)、欧文三日月印(1958年)、欧文ローラー印(年不明)の順で、この時代の切手上に見られる代表的な消印を並べています。ある意味では消印タイプ違いの羅列ですが、この切手の活躍した最も代表的な時期として、さまざまな目的に使用されたことを表現する意味もあります。この切手の主な発行目的は書留書状合算料金ですが、期間も長いのでさまざまな用途に混貼で使用されています。使用面の姿を語るのに、外国郵便用の欧文印は必要不可欠なものとは言えませんが、このリーフに欧文印を使ったのには、やはり「賑やかにするため」という目的があります。エンタイヤ上では、第3地帯あて航空便115円(70円+45円)、書留料金48円(45円+3円)などの混貼使用例を見かけます。

この中期切手の製造面の姿は、細かく見るとさらに分類することができます。時代がくだるにつれ刷色のつやが増し、鮮やかな青色になっていきます。用紙の白色度も、年とともに増しています。このリーフの最下段中央に貼ってある使用済田型(35年消し)は、際立ってつやのある切手です。この点の表現力を高めるには、中央に未使用ブロックと同じ段に、未使用のつやあり切手を貼りたいものです。

第2リーフには、昭和41年の料金改定に先だって少量製造された後期切手を整理しました。昭和36年の料金改定によってこの45円切手は不要となり製造は中止されていましたが、昭和41年の料金改訂で国内定形外便(150g)、外国第2地帯あて航空便はがきに、45円という料金が発生しました。この料金に対応する45円切手として、昭和42年5月にローマ字国名入りの新切手(ミズバショウ)が発行されましたが、それに先だって再製造されたのがこのグループの切手です。

この再製造切手の大きな特徴は、目打形式の違いです。刷色(くすみ青)やグラビアスクリーン(250線)にも違いがあります。上耳への目打抜けのない「逆抜櫛型」目打を表現するために、第1コーナーの未使用田型を貼りました。中期切手のブロックと位置を揃えるのが理想ですが、左右対称ですから、左右が違っていても表現力は落ちません。後期切手の使用済としては、和文櫛型時刻24H(42年)、欧文三日月(1967年)、和文ローラー(42年)、そして和文櫛型時刻戦後(42年)の田型を使ってあります。欧文三日月と和文ローラーは、この時代の用途に直接対応した消印です。

この2リーフを全体としてみたとき、この切手として最も代表的な中期切手が詰め込み気味で、逆に後期切手のスペースが間延びしている点が引っかかります。中期切手の用紙や刷色バラエティを加えると、この傾向はさらに強調されます。本来ならこの中期切手に1リーフ分のスペースを与えたいところですが、2リーフにまたがっての1リーフ分とか、初期と後期を合わせて1リーフというくくり方は、やはりまずそうです。初期・中期・後期をすべて別々に1リーフずつまとめるのが理想とも言えますが、切手展でリーフ数の制限がある場合は、それも難しい面があります。現時点でマイアルバム中では、この45円切手にはあと2リーフの使用例のページ(書留書状、外信混貼多数貼り便/1枚貼り航空はがき)が伴っていて、全4リーフできれいに納まっています。

今のところ思い描いている将来の方向は、第1リーフを次のような形に再構成することです。さらに第2リーフは、未使用をもっと大きなブロックに改めたり、(羅列ではありますが)消印の種類を増やして、隙間をなくしていこうと考えています。


ところでこのような構成のリーフをJAPEXなどの競争切手展に出品すると、充分に予想される審査員コメントがあります。それは、「未使用と使用済の混用は避けましょう」というコメントです。未使用切手で製造面を、使用済切手やエンタイヤで使用面を表現するのが、伝統郵趣コレクションの常道とされているからです。未使用・使用済の混用はゴチャゴチャして、見栄えという点でよろしくないということもあります。

冒頭に掲げた2リーフに貼ってあるマテリアルを使って、この指導に従ってリーフを作り替えてみると、おおむね次のようになるかと思います。第1リーフには未使用のブロック3点を集め、やや詳しい書き込みをつけました。第2リーフは使用面表現としましたが、別記事でも話題にしたように、単に消印のタイプ違いを羅列するのではなく、郵便料金の時代別にくくって「使用第1期」、「使用第2期」、「使用第3期」というように分類してみました。製造面の初期・中期は、使用面で見れば同一の時代にくくられます。使用第2期は昭和36年6月〜41年6月の間の「封書10円、書留料金40円」の時代ですが、前述のようにこの期間は45円切手が用途を失った時期であり、在庫切手が細々と混貼で使用されていたにすぎません。一応切手2枚分のスペースを確保してありますが、ちょっと手元の在庫を探した範囲では、貼るべき切手が見つかりません。もっとも、用途のなかった時代の使用済切手などというものは、なければないでもよいのかも知れません。

B案 : 未使用・使用済を分けて、製造面と使用面を表現

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見栄えという点では、確かにこのようなまとめ方の方がスッキリしていると言えましょう。製造面の3つの時期の違いも、1リーフの上に集めたので明確になります。

しかしこのまとめ方の最大の欠点は、これらの製造時期の違いが、書き込みでしか表現されていない点です。初期切手に「1957年頃まで」という書き込みがつけてありますが、その証拠がないのです。冒頭に示したA案では、すぐ隣に初期の消印のついた使用済切手を並べてあるため、その紙質や刷色を見比べることにより、確かにこのタイプの切手が(1957年までかどうかの証拠はありませんが)初期の切手であることを主張することができます。

この45円切手の含まれる「第2次動植物国宝シリーズ」では、製造期間が長い上に切手製造技術の発展期と重なったため、昭和20年代に製造された初期切手と昭和30年代以降の中期・後期切手とが、共通の視点で分類できるという特徴があります。消印の年号によってこれらの時期を分類することは、このシリーズの場合は特に大きな意味をもつということができます。

なおB案の第1リーフでは、今後中期切手のバラエティが入手できた場合、うまく収容するのが困難です。下段を詰めてもう1点ということになるでしょうが、同じ段の左2点と右1点の間に仕切りがあるというのは、対称性の点で美しくありません。


同じ切手を材料にして、A案、B案両方のまとめ方を示しましたが、皆さまはどちらに軍配を上げますか? あるいはもっと別のC案ですか? 上の説明文の中にも書いたように、私はやはりA案の方がよいと考えますが、B案の方にもよい点があることは認めます。

このような問題には、絶対的な正解というようなものは存在しません。それぞれの案の上にたって、弱点を補うためにはどんなマテリアルを入手してどんな風にストーリーを作り、どのようにリーフを構成したらよいかと考えていく過程こそ、知的活動としての切手収集の醍醐味と言えるでしょう。そのような活動を経てできあがったコレクションには、コレクションを作った人の個性が輝いています。

昔と比べればさほどでもないとも言えますが、それでも切手コレクションが高価なマテリアルのあるなしにもとづいて評価される傾向は、まだまだ強すぎると思います。JAPEXでの伝統郵趣部門の採点基準では、マテリアルの希少性・状態の配点は30点ですが、古い時代の切手と新しい時代の切手では、主題の選定、構成・展開(30点)の中にも希少性の違いが暗に反映されることになります。実質的には、希少性のウェイトはもっと大きいと言えましょう。高価なマテリアルが使用された作品をそうでない作品より高く評価するのは結構ですが、高価な材料にはそれにふさわしい扱い方というものがあります。作品の構成がその高価なマテリアルを充分に活かすものになっていない場合は、減点の対象にすべきではないでしょうか。

マテリアルの希少性よりも、そこで展開されているストーリーの独自性・合理性、その達成度を優先してコレクションを評価するのが当たり前という時代が、早く来てほしいものです。そのような流れの中で、切手収集の真の楽しさに魅せられる人も増え、切手収集の活性化も実現するのではないでしょうか。2006年2月の「北九州切手のつどい」での講演をしめくくった最後のフレーズを、ここにも掲げておきたいと思います。

品物の価値よりもストーリーの価値を