某日、実家に帰省した際に地元の友人たちと飲みに出かけた。久しぶりの再会で、話も盛り上がる。

「・・・そっか、独身なのってこの中じゃ俺だけなんだ。」
「お前、全然予定ないわけ?」
「相手もいなけりゃ金も無い。第一プー太郎がどうやって家族養うんだよ?」
「こっち帰ってくる予定ない?ウチは中堅いないから大変なんだよ」
「そうそう、俺もこないだまで無職だった」
「あ、アイツ1ヶ月の派遣決まったらしいよ」

旬(?)の話題に花が咲く。どこも不景気ですこと。

「俺の嫁さんの実家、駄菓子の卸やってんだよ。今度のお祭りで出店するから忙しいんだ」
なんて良い奥様をもらってしまったのだ、アナタは!
「へー、それじゃラムネとか飲み放題じゃん。クジとか引き放題じゃん。チョコカステラとか死ぬほど食えんじゃん」

幼少時代に夢見た優雅で贅沢極まりない駄菓子生活。他にも『5円玉のチョコ』や『ふ菓子』など、駄菓子界の英雄たちが浮かんでは消え、浮かんでは消える。
だが、駄菓子の帝王、「キング・オブ・駄菓子」と言えば、『うまい棒』をおいて他にはないだろう。
国内最大手の巨大掲示板 『2ちゃんねる』においては、管理人の西村博之氏が好んで食したというエピソードから、そのサーバ群には『うまい棒』にちなんだホストネームが冠されている。
たまたま見つけたのだが、『うまい棒同盟』なんてページもある。
かつて、これほどまでに愛された駄菓子があっただろうか?
その人気ぶりから察するに、販売元の株式会社やおきんの主力商品なのは間違いない。

「卸だったら、個人での購入は出来ないのかな??」
「そんな事ないよ。なにか欲しいのある?」
「俺、うまい棒欲しいな。嫁さんに話しておいてくんない?」
「ああ、いいよ。どのくらい欲しい?」
「じゃあね・・・1000本!」
「・・・は?」
「だから、1000本!」
酔った勢いとは言え、何と無謀な注文をしているのだ俺は。
「そこまで言うなら分かった。発注後のキャンセルは出来ないからな!」

酒の席と言うのは、様々なエピソードが生まれるものだ。合コンで女子大生をGetしたり、趣味が合ってスポーツやツーリング、釣りの仲間が増えたり、酒癖が悪く飲み会のたびに友達が減って行くヤツがいたり・・・
俺がこの席でGetしたものは『うまい棒』1000本だった。

やがて納入の日がやってきた。
「俺も手伝いで色んなお客と接してきたけど、個人で1000本ってのは初めてだなぁ。」
それはそうだろう。こんな話、聞いた事がない。一時期の『チョコエッグ』ブームで、いい歳したオッサンが箱買いしている映像をニュースで見たときには「嘆かわしい世の中になったもんだ」と憂いていたが、俺の場合はある意味これの上を行くような気がする。
まさしく『大人買い』
若気の至り・・・では済まされないだろう。そもそもそんなに若くもない。
「サービスで50本増量しておいたよ。味は各種取り揃えてあるから。」
「う、うん。ありがと・・・」
代金の\10Kと引き換えに、眼下に広がるダンボール2箱分ぎっしり詰められた『うまい棒』。
商社と言うのは、こうして生まれるものだと悟った俺であった。
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