ご存じのように、カレイやヒラメの背ビレとしりビレはとても長く、立鰭筋もまた長いので、魚が大きければそれなりにまとまった量をとることができます。
立鰭筋自体は硬骨魚類ならばどんな魚にもあります。エンガワは、カレイやヒラメからしかとれないというわけではありません。が、この点でカレイやヒラメは有利なのです。
たとえば、50センチほどのタイなら、タイのエンガワをとることもできるのですが、背ビレとしりビレあわせて、すしを4貫握るのがやっとの量しかとれません。これに対し、50センチのヒラメならば16貫はとることができます。
それでも、身の量に比べるとかなり少ないのはおわかりいただけると思います。50センチのヒラメなら、身の方は握り約80貫分に相当します。
エンガワは希少価値のある部位なのです。
とはいえ、最近は回転寿司でもよく見かけるネタになっていますね。
このエンガワはなんなのでしょうか。
まず、ふつうのヒラメやカレイからとったものとは色が違います。
鮮魚のヒラメからとったものは、有眼側と無眼側(つまり黒いほうと白いほう)によって微妙に色が違いますが、基本的に透明感のあるアイボリーです。
回転寿司のものは純白で、真珠色の皮が多少ついているものもありますね。ヒラメのものに比べると歯ごたえでやや劣り、脂のノリではかなり勝ります。
つまり、このタイプはヒラメのものではないということになります。
結論から言えば、このエンガワはカラスガレイ(商品名でギンカレイともいう)のものです。
そう、冷凍の切り身で「むきかれい」として売られる、あれです。
大型のカラスガレイは最近では切り身にしないで、五枚おろしにしてエンガワをとり、残りの身をカレイフィーレとして流通させるようにしているのだそうです。こっちのカレイフィーレのほうも回転寿司ネタになっていることもありますね。
エンガワの商品価値が高いことで、輸出加工業者もひと手間かける気になったようです。
カラスガレイ(Reinhardtius hippoglossoides)は、最大1.2メートル(メスのほうが大きく、オスは80センチくらい)になり、北極を中心に北大西洋、バレンツ海、白海、シベリア沿岸、ベーリング海にまたがって分布します。数はぐっと少なくなりますが、オホーツク海にもいますし、寒流に乗って新潟沖くらいまで入ってくるものもあるようです。
カラスガレイの特徴は、なんといっても体の両面ともに黒いことでしょう。それが「カラス」の由来です。
このため、皮を取り去って「むきかれい」として売られます。両面ともに黒いので、切り身にして姿がわからなくなってしまうとカレイなのかどうか疑わしく思われてしまうからでしょうね。
英名ではグリーンランドハリバットといいます。学名の種名hippoglossoidesは(外見が)「オヒョウ属に似た」という意味ですし、分類上は本物のオヒョウとは近いような遠いような微妙な位置ですが、とにかくハリバットと呼ばれているということでか、特大サイズのカラスガレイのエンガワは「オヒョウのエンガワ」として入ってくることがあります。
たしかに、最近では大型カラスガレイの数も少なく、付加価値をつけたくなるのは当然なのですが、詐称はいけませんねえ(笑
オヒョウの身質はヒラメに近く、北の海に住むわりには脂肪分が非常に少ない魚ですから、脂がにじむようなカラスガレイとはまったく異なります。

カラスガレイの御姿です