森脇代理人

乙第22号証及び乙第29号証を示す

今示した乙第22号証及び乙第29号証の陳述書,これはあなたがこの裁判

で裁判所にお出しになっているものですが,記載内容については,あなた御

自身よく確認した上で,間違いないということで署名,押印なされたもので

間違いございませんか。

間違いありません。

あなたの経歴については,乙第22号証の冒頭に書いてありますけれども,

もともとの御専門は土木技術者であると伺ってよろしいでしょうか。

そのとおりでございます。

ちなみに,あなたは最近我が自及び諸外国におけるPFI事業の手法とその

問題点について書かれた研究論文で,東京大学工学部から博士号を授与され

ましたか。

はい,そのとおりです。

熊谷組で取締役に就任なさったのは,平成86月ということでよろしいで

しょうか。

はい,そのとおりです。

平成910月に会社が経営革新中期計画を発表した後の同年11月に会社

の社長に就任されておりますが,その直前の役職は何だったでしょうか。

常務取締役経営管理本部長でした。

乙第23号証を示す

今お示しした乙第23号証は,会社が平成57月に策定した体質改善3

年計画という計画の抜粋ですが,会社ではこれに基づいて,以後計画的に有

利子負債の圧縮,あるいは未収債権の回収といったことに取り組んできまし

たですか。

はい,そのとおりです。

乙第9号証を示す

今お示しした乙第9号証は,会社が平成910月に策定して発表した経営

革新中期計画という計画の抜粋ですね。

はい。

あなたは,当時経営管理本部長として,この計画の作成に関与しましたね。

はい,関与しました。

今これを仮に平成9年計画と呼ばせていただきますけれども,ちょっとその

4ページを見てください。4ページには,上には「財務体質の抜本的改革」

という表題があって,その中には会社が海外開発事業の整備あるいは国内固

定化債権の償却を一括して実施して,平成103月期に合計2390億円

の特別損失を計上して,財務体質の抜本的改善を図るんだということが書い

てありますね。

はい。

このとおりですね。

はい。

今伺ったように,平成5年に体質改善3ヶ年計画を立ててきたわけですけれ

ども,会社はなぜ平嘩910月という時期にこの平成9年計画を策定する

必要が生じたのか,簡単にその背景事情をおっしゃっていただけますか。

体質改善計画の効果があらわれまして,4年間で有利子負債,保証

債務が約2000億円削減でき,また平成93月には受注量も5

ぶりに1兆円を達成しまして,平成103月期にも業績が同じよう

な数値が見込まれたものですから,この期を機に。また,その当時日

本の経済の方も株価2万円を回復しまして回復基調にあると。そして,

海外の方も不動産市況も回復基調にあるということで,この際損失を

一気に処理して,経営計画を再建フェーズから発展フェーズに移行さ

せようとした次第でございます。

そうしますと,平成9年計画作成当時は,会社の本業の業績あるいは今後の

業績見込み,これは好調だったと伺ってよろしいでしょうか。

はい。業績が好調だったことがゆえに,このような計画を立てること

ができました。

好調であり,今後の業績見通しがあればこそ,思い切った損失処理あるいは

有利子負債の削減計画が立てられたんだという御趣旨ですか。

はい,そのとおりです。

その後実際の平成103月期の本業の業績を拝見しますと,売上高が1

132億円,営業利益が244億円,経常利益として155億円ということ

ですけれども,これは当時どのように評価されておりましたか。

業界順位売上高5番目だったと思います。業績としては,非常に堅調

だったと思います。

先ほどお示しした乙第9号証の平成9年計画の4ページなどを拝見します

,その期に海外の開発事業,これを十数件売却整理して,合計1500

円余りの海外事業整理損を計上するということですけども,整理する海外事

業の案件はどうやって選んだんでしょうか。

その当時保有コストが過大なもので,売却が早期に可能なものを選び

ました。

物件の中で,直ちに売却することはないけれども,今後次期以降整理してい

くという見込みのものについてはどうされましたか。これについては,引当

金を計上したということはありますか。

はい,引当金を計上いたしました。

原告のサイドでは,この平成9年計画によって処分した案件の多くは,既に

バブルの経済の崩壊によって,それ以前から時価が原価より大きく下落して

いたのにもかかわらず,会社が損失処理を先送りしていたものであるという

ふうに御主張なんですけれども,これらの物件の損失処理について,当時の

会計基準からすると,どうだったんでしょうか。

損失を引き当てる必要はありませんでした。

じゃ,これらの物件のいわゆる時価といったものについては,どのように考

えられていたでしょうか。

私どものやっておりました開発事業は,素地に付加価値をつけまして,

販売物件または事業物件としておりますので,ゴーイング・コンサー

ン・バリューをとっておりました。

そうすると,時価といっても考え方がいろいろあるわけですね。

はい,そのとおりです。

例えばどういった考え方があったということなんですか。

例えばそのまま事業価値を考えずに売却してしまうものとか,いわゆ

る…。

購入する側で見るとですけど。

再びその事業をつくり上げるために必要な金額を計上しておくと。

それは再調達価格ということですか。

はい。

時価については,幾つかの考え方があったということでしょうか。一

はい。

そうすると,先ほどおっしゃったのは,それより以前の期において必ずしも

損失処理必ずしなさいということでは,当時の会計基準からすると,そうで

はなかったという御趣旨ですか。

はい,そういう趣旨ではありませんでした。

あるいは会計基準を見ますと,時価が著しく下落したときとか.回復する見

込みがあるときといったような文言があるんですけれども,これらの判断基

,これは当時の会計基準からいうと,はっきりしたものがあったというふ

うに御理解いただけますか。

明確な基準はありませんでした。

そうすると,これら平成9年計画で売却した物件は,それまでの前年度以前

については,まだ時価が著しく下落しているとは言えない,あるいは今後時

価が回復する見込みがあるという御判断のもとに保有を続けていたという

ものでしょうか。

はい,そのとおりでございます。

平成9年計画の時点では,事業をなお継続するという方針で売却しなかった

物件の中で,後で触れますけれども,3年後の平成12年に立てた新経営革

新計画,これに基づいて損失処理した案件というものがございますか。

あります。

そのような案件について,この3年前の平成9年計画の時点で損失処理すべ

きだったということはお考えでしょうか。

その時点では考えませんでした。

そうすると,先ほど保有コストが過大なものから処分していったというふう

に伺いましたけれども,残した案件というのは保有コストから見るとどうだ

ったんですか。

保有コストが収支均衡しておりまして,長期に持つことが可能であり

まして,市況価格の回復を待つこと,また事業を継続することが可能

でありました。

そうすると,平成9年の時点では,それは残したというのは正しい判断だっ

たというふうにお考えなんですね。

私は,正しい判断だと確信しております。

それを平成12年計画では,なぜ処分することになつたんですか。

新会計制度が平成133月から適用されるということで,強制評価

減をとらなければならないとなったことであります。

じゃ,海外を離れて,若干国内のことについて聞きますが,平成9年計画で

は国内の長期滞留債権,これについてはどのような方針で損失処理をなさい

ましたか。

回収が困難なものについては,できるだけ引き当てをとりました。

この引き当てというのは,かなり積極的にとられたという考えですか。

はい,積極的にとりました。

ところで,熊谷組では以前より会社の決算については監査法人の監査を受け

ておりますね。

はい,そのとおりです。

平成9年度以前の決算についても,監査法人の監査を受けていますね。

はい。監査法人の方から適切な会計処理であったということで監査報

告を受け,また株主総会でそのように報告し,承認を受けております。

監査法人から適正意見を受けていたということですね。

はい。

平成9年度,年でいうと平成103月期,この決算についても監査法人の

適正意見を得て,決算として確定しておりますね。

はい。

この平成103月期の決算では,合計488億円の欠損金を計上されまし

たが,これはその年の6月の定時株主総会で法定準備金を取り崩してすぐに

欠損を解消した,こういう理解でよろしいですね。

はい,そのとおりです。

じゃ,次に平成113月期の業績について若干お伺いしますが,会社の平

113月期の決算,これは記録を拝見すると,売上高約9000億円,

営業利益が261億円,経常利益が76億円という業績ですが、この業績に

ついてはどのように評価されておりましたか。

売上高につきましては,計画より未達でございましたが,一般管理費

の削減,営業利益の増ということで,業績としては堅調であったと考

えております。

今おっしゃった営業管理費の削減というのは,目標であった500億円を下

回ったということでしょうか。

はい,一般管理費でございます。

営業利益は,前年よりよかったということですね。

はい,そのとおりです。

そうすると,この当時会社の経営が行き詰まっているとか,逼迫していると

かという認識はあったんでしょうか。

全くありませんでした。

じゃ,次に平成123月期の業績のことについてお伺いしますけども,

123月期の決算,これは記録を拝見すると,売上高が6914億円,

営業利益が176億円,経常利益が55億円だったということで,これはち

ょっと平成9年計画よりは低いようですけれども,この業績については,

のように評価なさっておりますか。

売り上げについては,市場が非常に厳しくなっておりまして,未達で

ございましたが,一般管理費の削減は前年度より大きくでき,また売

り上げ利益につきましては,前年度より1ポイント向上し,前々年度

より2ポイントばかり向上しておりまして,経営計画が進んでいると

いうことで私は考えておりました。

今売り上げ利益とおっしゃったのは,売り上げ利益率が改善されておったと

いうことですか。

はい,そのとおりです。売り上げ利益率です。

が前年より1パーセント,前々年度より2パーセントよくなっていたと。

はい。

会社にとって売り上げ利益率というのを1ポイント上げるというのは,どの

程度大変なことなんですか。

この当時9.数パーセントだったと思いますので,1パーセント上げ

るということは,10パーセント前年度より上げるということで,

大変な努力が必要だったと考えております。

 甲第13号証を示す

次に,平成12年の新経営革新計画のことについてお尋ねいたします。今お

示しした甲第13号証は,これは会社が平成12918日に発表された

新経営革新計画という計画の書類でございますね。

はい,そのとおりです。

これを今仮に平成12年計画と呼ばせていただきますが,この作成にはあな

たは会社の社長として関与なさいましたね。

はい,そのとおりです。

この計画の主要な柱の一つは,不良資産の一括処理ですね。

はい,そのとおりです。

ちょっと7ページをあけてごらんください。ここを見ますと,グラフが書い

てありますが,ちょっと左側読みにくいですが,海外事業資産の処理で約2

800億円,それから国内債権の処理で2000億円など合計5700億円

の特別損失を計上するんだという内容ですね。

はい,そのとおりです。

平成12年計画,これを作成するための作業,これはいっごろから開始され

たんでしょうか。

平成127,前年度の株主総会が終了した後開始いたしました。

定時株主総会は6月末ですね。

はい。

その直後ごろから開始したということですか。

はい,そのとおりです。

どういうチームで作成していますか。

財務本部と経営企画本部からメンバーを集め,チームを編成いたしま

した。

なぜこの時期にこの計画の作成が必要になったのかということについて,

なたの陳述書には,1にこの年に新しい会計基準が変更になって適用され

るようになったと。それから,2に当時会社を取り巻く環境が一段と厳し

くなったということを挙げておられますけど,まず最初のこの会計基準の変

更ということについて,もともと会計の御専門家ではないでしょうけれども,

どのあたりが変わったというふうに理解されておりますか。

特にたな卸不動産については,強制評価減をとらなければならないと

いうことで,時価が50パーセント以上傷んでいるものについては,

強制評価減をとらなければいけないと。また,たな卸不動産につきま

しては,不動産鑑定士の評価が必要であるという新しい基準が明確に

平成127月に採用され,それにのっとって平成133月期に損

失処理をするようにという基準でありました。

今おっしゃった強制評価減,減損処理をしなければいけないということです

ね。

はい。

著しく価格が下落しているということの解釈として,50パーセント以上取

得価格がほかより下落しているときはそれに当たるんだということですね。

そのとおりです。

基本的には,不動産鑑定士の評価をとりなさいといったことですね。

そのとおりです。

評価の仕方として,売却見込額をもって基本的に考えなさいということもあ

ったんですか。

はい。

あるいは回復の見込みがあるかないかということを従前,先ほど余りはっき

りした基準はなかったということでしたけども,これについてはどうでした

か。

たしか期間等がある程度決められてきて,確実にそういう証拠がなけ

れば回復の見込みということが言えないような規定だったと思いま

す。

こういったものの細目がはっきり決まったのが平成127月なんだという

理解ですね。

はい,そのとおりです。

熊谷組は,本体あるいは海外の子会社として,多くの不動産開発事業である

とか販売用不動産を持っていましたね。

はい,そのとおりです。

この新しい会計基準の適用によって,大幅な損失処理が必要になるんだとい

うことになったわけですか。

そのとおりです。

次に,2番目の先ほど申し上げた会社を取り巻く環境がこの当時一段と厳し

くなったというようなことが書かれておりますけども,具体的にちょっと説

明していただけますか。一

熊谷組の融資を受けている準メインの銀行は新生銀行でありました。

新生銀行は,そごう,そして第一ホテルのメインバンクだったと思い

ますが,こちらの方で債務免除が適用できないということで,新生銀

行から当社へ融資している分についても信用不安が当時流れまして,

たしか6月ごろだったと思いますが,株価が額面を割ったということ

,お客様,また納入業者,下請業者に信用不安が出てきましたもん

ですから,これを払拭するために新しい経営計画の作成が必要であり

ました。

今おっしゃった新生銀行は,旧日本長期信用銀行ですね。

はい,そのとおりです。

今おっしゃったのは,そごうあるいは第一ホテル,これが銀行に対して債権

放棄要請をしていたけれども,新生銀行がこれに応じないということだった

わけですね。

はい,そのとおりです。

このために平成127月にそごうは民事再生申し立てをしましたね。

はい,そのとおりです。

あるいは第一ホテル,これも平成125月に法的倒産に至りましたね。よ

ろしいですか。

はい,そのとおりです。

今おっしゃったのはそれとの連想で,準メイン銀行が新生銀行だった熊谷組

もいろいろマスコミに取りざたされるようになったということなんでしょ

うか。

はい,そのとおりです。

6月に株価が割れたというのは,熊谷組の株価が額面割れし之ということで

すね。

そのとおりです。

そうすると,急いで信用維持のために,こういう計画を策定する必要が生じ

たと。

はい,そのとおりです。

平成12年計画を立てる前提として,会社はその保有するほとんどすべての

資産について,新しい会計基準に基づく時価評価を実施したんでしょうか。

はい,そのとおりです。

乙第16号証を示す

今お示しした乙第16号証というのは,会社が行った資産の時価評価の方法,

あるいは評価損の処理方法が,その期から適用されることになった新しい

会計基準あるいは公認会計士協会で定めたガイドラインに照らして妥当か

どうかということを監査法人に監査してもらった報告書ですね。

はい,そのとおりです。

ちょっと2ページ目をあけてごらんになってください。この2ページの記載

によると,会社は保有する販売用不動産あるいは不動産事業,海外開発事業,

国内問題債権のほぼすべてについて不動産鑑定士による鑑定評価を実施し

,評価額が簿価より50パーセント以上下落している物件すべてについて

減損処理を実施したとありますが,そのとおりですか。

そのとおりです。

そうしますと,会社は1件ごとに時価評価と評価損を積み上げて,必要とな

る損失処理額を出していったということでしょうか。

そのとおりです。

損失処理のためには原資が必要になりますね。

はい。

その原資を捻出するために資本の減資とか,あるいは銀行への債務免除を要

請しなければならない金額とか,そういったものを詰めていったということ

でしょうか。

はい,そのとおりです。

そういう作業は相当集中的になさったというふうに伺ってよろしいでしょ

うか。

はい,そのとおりです。

じゃ,この平成12918日に計画の公表に至ったということですね。

はい,そのとおりです。

あなたは,当時社長として個別の案件の評価方法あるいは評価内容まで細か

くごらんになっていたんでしょうか。

全体的な報告は聞いておりましたが,個別の案件の詳細については聞

いておりません。

適宜必要に応じてチームから報告は受けていたと。

はい。財務本部が中心になってやっておりましたけれど,そこからの

報告は受けておりました。

実際の作業は,プロジェクトチームで行っていたということですね。

はい,そのとおりです。

原告側では,平成133月の決算で計上した特別損失については,実は前

の年度以前から物件の時価が低下していたんだから,以前の年度で本来処理

すべきものであって,その以前の年度も実質的には欠損状態にあったはずな

んだというふうに御主張になっていますけども,どういうふうにお考えです

か。

企業の決算は,その時々の会計基準にのっとってやっております。私

どもの決算は,その時々監査法人から適切であるという監査を受けて

おります。私としては,それぞれの年,適切に処理されていたと思っ

ております。

 甲第41号証の1273ページを示す

今お示しした甲第41号証の12とい.うのは,平成133月期の熊谷組の

有価証券報告書のこの73ページというのは,財務諸表の注記の部分であり

ますけれども,そこには当期から金融商品に係る会計基準を適用した結果,

従来からの方法に比べ,税引前当期純損失3520億円多く計上されている

と書かれておりますけれども,これは今あなたのおっしゃったことと関係が

あるんでしょうか。

はい,そのときの会計基準で出た損失であります。

そうすると,前年度の基準でやっていれば,この損失というのは出なかった

という趣旨の解釈ですね,そこは。

はい,そうです。

新しい会計基準を適用した結果,多く計上されているんだということですね,

損失がね。

はい,そのとおりでございます。

ここに書かれているのは,期末に保有している有価証券や債権の評価損につ

いての数字ですけれども,そうしますと会計基準の変更を機に会社がその期

中で売却した,あるいは償却を行った資産の損失,これを加えれば会計基準

の変更による損失額はこれよりもっと大きな金額になるんじゃないでしょう

か。

そのとおりでございます。

ところで,さっきもちょっとお聞きしましたけれども,平成12年計画で損

失処理した海外事業の中には,3年前の平成9年計画のときには事業を継続

するとして保有を続けた案件もあるんじゃないかと思いますけど,どうでし

ょうか。

そのとおりでございます。

そうすると,平成9年の計画のときと平成12年の計画のときとで,同じ案

件の評価が大幅に異なるというのはどういった理由によるもんでしょうか。

まず第1,会計基準の変更であります。二つ目としては,この3

間の間で事業環境等が変わってきておりますので,そこらを合わせた

影響となっております。

甲第13号証の3ページ〜4ページを示す

これは再び新経営革新計画,平成12年計画ですけれども,3ページの上の

方に「「選択と集中」による事業構造の見直しと競争力の強化」ということ

が書いてありますね。

はい。

そして,もう一ページめくっていただいて,4ページの上の方,(2)とし

て「海外工事における得意分野,地域への特化」といったことが書いてあり

ますね。

はい。

これは,新しい会計基準の適用と何か関係があるんでしょうか。

当社の場合,世界各地で開発事業を行っておりましたけれど,新しい

会計基準からも今後は選択と集中が必要であるということで,開発事

業については改めて見直しして整理等を始めております。

新しい会計基準を機に,かなり海外の案件から撤収を図ったということです

ね。

はい,そのとおりです。

平成129月にこの新経営計画を発表された後の同じ年の12月に,あな

たは社長及び会社の取締役も辞任して会社の経営陣から離れられましたね。

はい,そのとおりです。

なぜこのタイミングでの辞任ということになったんでしょうか。

金融機関に債務免除を4500億円お願いしておりました。この時期

,ほぼ金融機関から内諾を得ることができました。それを契機に経

営から退きました。

大きな損失処理のめどがついたのを機に経営責任をとったということです

ね。

はい,そのとおりです。

あなたが退任された後の2年後の平成153月期に,会社は約3000

円の特別損失を計上しているようですけれども,その内容とか詳細について

あなたは御存じですか。

私は,経営から退いておりましたので,知りません。

経営には一切タッチしていないわけですね。

はい。

じゃ,次に本件で問題になっている熊谷組が行っていた政治献金のことにつ

いてお尋ねします。会社が行っている政治資金の寄附,いわゆる政治献金は,

あなたの社長在任当時は年間で総額幾らぐらいであったというふうに記憶さ

れておりますか。

2000万円から3000万円でありました。

熊谷組においては,年度ごとに会社全体の予算を立てると思いますけれども,

政治献金についても大まかな予算というものは立てておりましたか。

はい。年度末に次の年の予算をその当時の経営状況を考えながら予算

を決めますが,寄附金,政治献金等は一般管理費の中で決めております。

金額としては幾らぐらいですか。

例年約2000万円から3000万円の金額です。

熊谷組では,政治献金の所管部署は秘書部であったということですね。

はい,そうです。

会社に対して献金要請があった場合に,秘書部ではどういったことをチェッ

クなさるんでしょうか。

まず,献金金額が過大でないか。そして,選挙に絡んだ献金ではない

か。また,政治資金規正法の枠内であるかというようなことをチェッ

クして報告が来ます。

政治資金規正法の限度額というのは,当時熊谷組は幾らだったんですか,

間。

8700万円です。

秘書部の方で,一応これは献金してもいいんじゃないかというものが決裁に

回ってくるんでしょうか。

秘書部としては,1次の審査ということで,これは規定内というこ

とで報告が来ます。

それは,あなたに来る前にだれに回りますか。

担当の副社長であります。

副社長の承認をとってからあなたのところに回ってくるということですね。

はい。

会社は,あなたが社長になられる前から毎年自由民主党の政治資金団体であ

る国民政治協会に献金を行ってきたわけですが,その理由を一言で言えばど

ういうことになりますか。

自由経済主義の維持発展,これによって熊谷組の経営基盤も安定する

というように考えておりました。

原告側,あるいは1審の裁判所は,自由主義経済体制の維持発展というだけ

では,今日の我が国の主な政党は皆同じ経済体制を標榜しているわけだから,

自民党に対する献金の理由としては合理的じゃないじゃないかというふう

に言っておりますけれども,どのようにお考えでしょうか。

私の意味するところは,政党がそれを標榜しているということだけで

なく,やはり政権政党として戦後経済復興をさせてきたその実績,

た経済政策の立案能力,そしてその実行力に注目して支援してきた次

第であります。

あなたが社長だった時期というのは,我が国経済は長期景気低迷の中にあり

ましたね。

はい。

それとの文脈の中では,どういう趣旨になるんでしょうか。

ともかく早く不況から脱却して経済を活性化させ,長期に安定した経

済体制をつくってほしいという気持ちがありました。

そのために基盤,実績と能力のあるのは自民党であったというふうにあなた

は考えていたということですね。

はい。

次に,1審判決は,本件で問題になっている献金は会社にとっては何らの有

用性もないむだな支出であったんだというふうに断定していますけども,

なたとしてはどういうふうにお考えですか。

もちろん政治献金は,具体的に有用性ということではないかもしれま

せんが,先ほども申し上げましたように,経済政策が成功すれば長期

に経済が安定し,そして私どもの建設産業としましても将来の経営基

盤の安定につながると考えました。

本件で問題となっている献金の中には,国民政治協会からもともとは日本建

設業団体連合会,いわゆる日建連を通じて献金の要請があったものが相当あ

りますね。

はい。

日建連というのは,建設業界の中では最大の業界団体ですね。

そのとおりです。

幾つかの業界団体のほか