政治資金規正法の解釈の検討

― 支出報告において飲食費を事務所費に含めることの違法性について

 

2007113日(土) 

政治資金オンブズマン共同代表

上脇博之

 

1.支出についての報告書の提出に関する法令とその解釈・解説

 

(1)現行の政治資金規正法第12条第1項第2号は以下の通り。

(報告書の提出)第12条第1項

2.すべての支出について、その総額及び総務省令で定める項目別の金額並びに人件費、光熱水費その他の総務省令で定める経費以外の経費の支出(1件当たりの金額(数回にわたってされたときは、その合計金額)が5万円以上のものに限る。)について、その支出を受けた者の氏名及び住所並びに当該支出の目的、金額及び年月日

 

(2)この規定の読み方その1(前段と後段を分けて読む)

@    「すべての支出について」は、「その総額及び総務省令で定める項目別の金額」を報告しなければならない。

 

A    「人件費、光熱水費その他の総務省令で定める経費以外の経費の支出(1件当たりの金額(数回にわたってされたときは、その合計金額)が5万円以上のものに限る。)について」は、「その支出を受けた者の氏名及び住所並びに当該支出の目的、金額及び年月日」を報告しなければならない。

 

(3)この規定の読み方その2(規則を含めた解釈)

@    「項目別の金額」を報告しなければならないのは、「人件費、光熱水費、備品・消耗品費、事務所費、組織活動費、選挙関係費、機関紙誌の発行その他の事業費、調査研究費、寄附・交付金及びその他の経費」(政治資金規正法施行規則第7条第2項)。

 

A    「支出を受けた者の氏名及び住所並びに当該支出の目的、金額及び年月日」を報告しなければならないは、「人件費、光熱水費、備品・消耗品費、事務所費以外の経費の支出(1件当たりの金額(数回にわたってされたときは、その合計金額)が5万円以上のものに限る。)」=「組織活動費、選挙関係費、機関紙誌の発行その他の事業費、調査研究費、寄附・交付金及びその他の経費の支出(1件当たりの金額(数回にわたってされたときは、その合計金額)が5万円以上のものに限る。)」(政治資金規正法施行規則第8条)

 

(4)上記法令の解説

「『支出』は、会計帳簿と同様、経常経費と政治活動費の2つに大きく分類される。

まず、『経常経費』とは、本条第1項第2号に規定する『総務省令で定める経費』をいい、@人件費、A光熱水費、B備品・消耗品費、C事務所費がこれに該当する。

この『経常経費』については、各項目ごとの年間の総額を記載すれば足りることとされている。

 

次に、『政治活動費』とは、経常経費以外の経費の支出であり、@組織活動費、A選挙関係費、B機関紙誌の発行その他の事業費、C調査研究費、D寄附・交付金及びEその他の経費がこれに該当する。

『政治活動費』は、これらの区分を、必要に応じて、さらに各費目ごとに細分したうえで、1件当たりの金額(数回にわたってされたときは、その合計額)が5万円以上のものについては、その支出を受けた者の氏名及び住所(団体にあっては、その名称及び主たる事務所の所在地)及び支出の目的、金額、年月日を記載することを要する。」(政治資金制度研究会編集『逐条解説・政治資金規正法[第2次改訂版]』ぎょうせい・2002120頁)・・・・下線は上脇。

 

2.領収書の添付に関する法令とその解釈・解説

(1)政治資金規正法第12条第2項は以下の通り。

(報告書の提出)第12

2 政治団体の会計責任者は、前項の報告書を提出するときは、同項第2号に規定する経費の支出について、総務省令で定めるところにより、領収書等の写し(領収書等を徴し難い事情があつたときは、その旨並びに当該支出の目的、金額及び年月日を記載した書面)を併せて提出しなければならない。

 

(2)その解釈

@「組織活動費、選挙関係費、機関紙誌の発行その他の事業費、調査研究費、寄附・交付金及びその他の経費の支出(1件当たりの金額(数回にわたってされたときは、その合計金額)が5万円以上のものに限る。)」については、「領収書等の写し(領収書等を徴し難い事情があつたときは、その旨並びに当該支出の目的、金額及び年月日を記載した書面)を併せて提出しなければならない。」

 

A「人件費、光熱水費、備品・消耗品費、事務所費」については、「領収書等の写し」を提出する必要はない。

 

(3)その解説

「政治団体の会計責任者は、収支報告書を提出するときは、本条第1項第2号の支出、すなわち『政治活動費』であって、一件当たりの金額(数回にわたってされたときは、その合計額)が5万円以上の支出について、領収書その他の支出を証すべき書面……の写しをあわせて提出しなければならない。」(政治資金制度研究会編集『逐条解説・政治資金規正法[第2次改訂版]』ぎょうせい・2002122123頁)・・・・下線は上脇。

 

 

3.以上についてのまとめの一覧

分類

項目

報告内容

報告内容

領収書の添付

経常経費

@人件費

項目別の金額

A光熱水費

B備品・消耗品費

C事務所費

政治活動費

@組織活動費

支出を受けた者の氏名及び住所並びに当該支出の目的、金額及び年月日

領収書の添付

A選挙関係費

B機関紙誌の発行その他の事業費

C調査研究費

D寄附・交付金

Eその他の経費

 

 

4.事務所費に飲食費を含めて報告し、領収書を添付しないことが許されるか?

 

(1)結論

 

@    事務所費に飲食費を含めて報告し、領収書を添付しないことは、許されない。

 

A    飲食費は政治活動費として報告し、その報告書には領収書を添付しなければならない。

 

B    領収書等を徴し難い事情があったときは、その旨並びに当該支出の目的、金額及び年月日を記載した書面を提出しなければならない

 

(2)許されない理由

@    法令は政治活動費と経常経費とを厳密に分類し、政治活動費については厳しく、経常経費についてはそう厳しくなく報告させるというように法的取扱いを異にしているうえに、“政治活動費は経常経費以外の経費である”と解説されているのだから、当然、経常経費の内容は限定されていると解すべきである。

 

A    事務所費は、経常経費に含まれているから、経常経費の概念を逸脱する費用が含まれてはならない。

 

B    「事務所費」は、「事務所の賃料損料(地代、家賃)、公租公課、火災保険金等の各種保険金、電話使用量、切手購入費、修繕料その他これらに類する経費で事務所の維持に通常必要とされるものをいう。」(政治資金制度研究会編集『逐条解説・政治資金規正法[第2次改訂版]』ぎょうせい・2002379頁)と解説されているが、ここでいう「その他これらに類する経費」は、その前に例示されているものに「類する経費」であって、かつ、「事務所の維持に通常必要とされるもの」でなければならない。報告者の主観的な判断に委ねられているわけではない。

 

C    それゆえ、飲食費は、「事務所の賃料損料(地代、家賃)、公租公課、火災保険金等の各種保険金、電話使用量、切手購入費、修繕料」に「類する経費」でもなく、「事務所の維持に通常必要とされるもの」でもないから、事務所費における「その他これらに類する経費」には含まれない。

 

(3)上記政治資金規正法違反における罰則の規定

 

25条 次の各号の一に街頭する者は、5年以下の禁錮又は100万円以下の罰金に処する。

1第12又は第17の規定に違反して報告書又はこれに併せて提出すべき書面の提出をしなかった者

2第12第17第18第3項又は第19条の5の規定に違反して第12第1項若しくは第17第1項の報告書又はこれに併せて提出すべき書面に記載すべき事項の記載をしなかった者

3第12第1項若しくは第17第1項の報告書又はこれに併せて提出すべき書面に虚偽の記入をした者

2 前項の場合(第17の規定に係る違反の場合を除く。)において、政治団体の代表者が当該政治団体の会計責任者の選任及び監督について相当の注意を怠つたときは、50万円以下の罰金に処する。

 

以上。