「スウェーデン式アイデアブック」フレドリック・ヘレーン著, 鍋野和美 訳, ダイアモンド社, 2005年からの引用です。
(引用始まり)
心理学者のJ.P.ギルフォードが創造性の研究に身を捧げたのは、ある きっかけからでした。
第二次世界大戦中、アメリカ空軍から依頼されて爆撃機のパイロットを選ぶ ことになり、知能検査や学業成績、個人面接の結果をもとに適任者を選抜し ました。
空軍はまた、退役した元空軍司令官にも同じ任務を与えました。ギルフォー ドは心理学をまるで知らない素人が携わることを苦々しく思い、また、司令官 のベテラン・パイロットとしての知識や経験をさほど評価しませんでした。案 の定、ギルフォードと元司令官はまったく違うタイプの人間を選びました。
しばらくして、二人の任務が査定されました。すると、ギルフォードが選 んだパイロットはことごとく撃墜されていたことが判明。大勢の兵士を死に追 いやってしまったことを知り、ギルフォードは悲嘆にくれました。そしてよう やく悲しみの底から立ち上がると、自身の失敗を検証するとともに、なぜ司令 官の選んだ人材が抜きん出ていたのかを徹底的に調べようと決意したのです。
ほどなく、元司令官は全員に「ドイツ領空で敵機に対空射撃にあったらど う対処するか」と質問し、軍のマニュアル通り「上昇します」と答えた兵士を 落していたことが判明しました。選ばれたのは、「その場になってみないとわ かりませんが、おそらく降下します」「ジグザグ飛行を始めます」「左右に機 体を揺らして砲火を避けてみます」など、いわゆる「間違った」回答をしたパ イロットばかり。その理由は、マニュアル通りに行動する兵士は意外性に欠け ており、予測されやすいからでした。
ギルフォードが失敗した原因はそこにありました。マニュアル通りに機体 を上昇させる兵士ばかり選んでいたのです。お決まりのパターンを敵側のドイ ツ軍は察知しており、雲の上で上昇してくるアメリカ機を待ち伏せていました。 つまり、知性が高くても常に規則通り動くパイロットより、機知に富んだ考え 方ができるパイロットの方が危険をうまく切り抜けられるということです。
違う考え方ができる能力、枠の外で考える能力---。そこではたと、ギル フォードは創造性や独創性というものに気づき、以来、その研究に没頭しまし た。また、より適性のあるパイロット、すなわち新しい問題を提示されたとき、 予想外の解決策を即座に見出すことのできる創造的な人材を見極める方法も考 案しました。
ギルフォードが空軍用に考案した最初の創造性テストは、「レンガ一個の 使いみちをできる限りたくさん考える」というものです。すぐに何通りも浮か ぶ人もいれば、いくら考えても五通りくらいしか思いつかない人もいるでしょ う。このテストはいまでは広く一般的に使われており、個人であれ、グループ であれ、創造性を刺激するよい訓練となっています。
(引用終り)