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出生前診断


2000.2.25
オープンしました



出生前診断って言葉、聞いたことがありますか?
かんたんに言っちゃうと、妊婦さんを検査して、胎児に障害があるかないかを
診断するものです。

出生前診断には、遺伝子検査,血液検査,羊水検査など、いろいろな検査が
あります。
このページでは、かんたんにできる血液検査として急速に普及している
”トリプルマーカー検査”について書いてみます。

まず、この検査がどんなものなのか説明します。

○検査する時期
  妊娠10週目というかなり早い時期に行われます。
  つまり検査結果によっては堕胎も可能です。
○検査方法
  検査は血液を採取するだけでから痛みもわずかですし短時間ですみます。
○予想できる先天性疾患
  ダウン症候群の確率(年齢だけで見た確率,年齢と検査結果で見た確率)
  神経管形成異常(NTD)のスクリーニング
○診断方法
  血液中の成分を測定します。
  α-フェトプロティン(AFP),繊毛性ゴナドトロピン(HCG),非抱合型エストリ
  オール(uE3)の3つです。
○料金
  保険は適用されません。
  1998年8月に検査を受けたときは9,450円(税込み)でした。

料金が高いことを除けば、なんかとっても簡単な検査だし、受けたいなーと
思うでしょ。
きっと、医師から勧められたら、ほとんどの妊婦さんが検査を受けるんじゃ
ないかな。

でも、この検査には決定的な欠点があります。
それは、あくまでも確率であり診断を下すものではないということです。
これは、検査報告書に
「この検査は胎児がダウン症候群または神経管形成異常であるかないかを
確定する検査ではありません。妊娠周期・体重および胎児数によって確率が
大幅に変わりますので、記載に誤りがないかをご確認下さい。」
と明記されていることからも明らかです。

ちなみにうちは
 ●年齢だけでみた場合のダウン症児妊娠の確率
    → 1/704
 ●年齢とトリプルマーカーで算出したダウン症児妊娠の確率
    → 1/5643
 ●神経管形成異常(NTD)のスクリーニング
    → AFPの上昇は見られません(<2.00 MoM)
という報告でした。
ん〜、ピンとこないでしょ。

つまり、
”異常と言われ、堕胎したらまったく異常などなかった”
”正常と言われ、出産したらダウン症や神経管奇形の異常があった”
ということがあり得るのです。
事実、そういうったことが報告されています。

そしてさらに罪なことは、
”堕胎したら罪悪感が消えない”
”堕胎したら健康な赤ちゃんだった。心に深い傷を負った”
”障害があるとわかっていながら出産を選んだことを非難された”
”産んでみたら障害児だった。ショック。”
”産んでみたら障害児だった。どうしても可愛がれない。”
といったような、いろいろな境遇におかれた妊婦さんたちをサポートする
仕組みがほとんど整っていないということなのです。

うちの場合、一人目の子どもに重篤な神経管奇形がありました。
在宅で人工呼吸器&酸素療法をしているため、二人目の子どもが障害児か
どうかを知ることは重要でした。
もちろん障害があっても産もうと決めてましたが、事前に知ることで準備できる
こともあります。
というわけで、この検査を受けました。

実際に検査を経験し(って言っても、実際に検査を受けたのはわたしではなく
妻ですけど)、いろいろ考えました。
このトリプルマーカー検査の是非については、私自身、葛藤してます。
肯定的でもあり、否定的でもあります。

以下、私見ですけど良かったら読んで下さいね。

【否定的な見解】

一般的に言われているように、
 ●検査の信憑性の問題
 ●告知された妊婦のカウンセリング
 ●障害者排除思想(優生保護思想)へ繋がる恐れ
 ●倫理などの問題
 ●お寒い福祉事情
などがありますから、安易にこの検査を普及させるのは反対です。
この辺は、ダウン症協会で問題とされていることにまったく異論がありません。

【肯定的な見解】

娘が入院してることもあり、とても沢山の家族を見てきました。
障害児が産まれたことが直接または間接的な原因で、別居,浮気,離婚という
ことも少なくありません。

”産まれてくる命を奪う”ということについての生命倫理については、わたしは
よくわかりませんが、この検査がまったく無意味とも言えないと思うのです。
つまり、
 ●きちんと説明する
 ●きちんとサポートする
 ●検査を安易に勧めない
ということが守られ、
 ●この検査のメリットとデメリットをきちんと理解した人だけが
  検査を選択できる
のであれば、検査そのものはあってもいいと思います。

もうちょっと考えてみましょう。

 1.福祉事情の問題

母子家庭にしろ父子家庭にしろ、暮らしをサポートする福祉にはなっていな
いことが問題だと思います。
もし、生活保護を受けたら、生命保険すら入れないとか、通院に必要な車すら
持てないと聞いたことがあります。
これでは、「障害児を産もう」という気持ちになれなくても仕方ないですね。

 2.社会の問題(国)

福祉予算、足りているのでしょうか?
「一人当たりの福祉負担額を年間あたり○万円増やします。」と言われても、
国民は納得してくれないでしょう。

知的障害などでIQが高いからと、手帳を貰えない(福祉制度を利用できな
い)方がいらっしゃいます。

先天性の直腸膀胱障害ならオムツ代が支給されるけど、中途障害の脊髄損傷
患者は人数が多い(予算がかかる)から制度が使えないなんてこともあります。

障害者を減らすことで、そういう方々も平等に福祉を利用できるってことにな
る可能性があるんじゃないか。
そう思ったりもします。

ただし、「障害児が生まれることを抑制する=医療費予算が節約できる」と
いう主張がありますが、まだ統計的な裏付けはないそうですね。

 3.社会性の問題(国民の意識)

欧米のように障害児を里子にとってくれるような社会ならともかく、日本は
障害児を育てられない家庭を保護するすべがないです。

残念ながら、障害者が生きやすい社会ではないと思います。
ですから、「こんなの自分の子じゃない...。」「手術なんかしないで死なせ
てやってくれ...。」とか、面会にすら来ない、と言う親が多い...。

そして障害を受容できなかった親の子どもには、死や施設での暮らしが待っ
ています。(もちろん、生きていれば幸せってのも事実ですが。)

【責任問題】

アメリカでは、出生前診断で、「障害児が生まれる」という診断を下さなか
った医師が、訴訟を起こされるという事態が起こってます。
日本でも、同様のことが起こり得ると思います。

【対策】

「病院て、診断とか治療が済んだら終わりじゃなくて、患者を社会へ橋渡し
すること。つまり、患者が安心して社会へ戻れるってところまで面倒みること
が大切なんじゃないか。」って思ってます。

出生前診断もそうですよね。(出生前診断に限らないけど。)
診断をする。「陽性が出ました。どうしますか?」ってそれで終わっちゃって
いる。フォローがないんですね。
堕胎するかどうかの悩み。障害児を産んだ方へのサポート。
堕胎した方へのサポート。
何もされてない所が多すぎるんですよね。

この検査は、間違いなく普及すると思います。
いろいろな対策があると思います。(検査の選択権確立とか、親の会でのサポ
ートとか...etc)
その中から、ひとつだけ、考えを披露させて下さいね。m(_)m

この解決策のひとつとして、病院の MSW(医療ソーシャルワーカー)がもっ
と機能して欲しいと思っています。
「必要なら医療相談室をたずねて下さい」なんて張り紙じゃなくて、医師が医
療相談を処方(保険点数をカウント)してくれればと思います。
病院も、医療相談で儲けてくれればいいんです。
無償で不十分(言葉が悪くてすみません。m(_)m)よりも有償できちんと対応
してくれた方がいいですもの。

まず、 MSWが医師・看護婦・地域の保健婦,訪問看護センター,患者,家族,
医療機器業者,保健所とのネットワークを確立してて欲しい。

そして、福祉制度,お金,地域の受け入れ,レスパイト,訪問看護,地域の
医療施設の受け入れ,療育施設,カウンセリング...etcと、
そういったたくさんの問題を解決し、安心して自宅へ戻してあげる。
また、返して終わりじゃなくて、何かあったら病院に戻れる。
そこまで病院(MSW)が面倒みてくれるといいなぁと思います。

そのためには MSWが資格化されればいいなぁと思っています。
経済的・社会的・心理的なこと,医療保険のこと,福祉制度のこと,退院後の
地域での連携,カウンセリング,医療と患者とのクッション役と、守備範囲が
広く、大変なお仕事です。
だから、きちんと職務を評価し、それ相応の賃金を支払う。
そうすることで、もっともっと優秀な MSWがどんどん増えてくれればと思って
います。

いろいろ方法はあると思いますけど、妊婦さんをしっかりサポートする仕組み
が整ってから初めて、こういう検査が普及して欲しいものです。


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