平成14年1月の句

棚雲に隠る初日や見晴らし台

あくまでも透明な空冬木立

枯葉道行き交ふ人に会釈して

酔夢より覚めて現の寒の朝

寒訓練空へ拡がる子等の声

初場所や小兵力士のきびきびと

凍つる道手綱引っ張る仔犬かな

冬晴れや富士見の丘へ富士を見に

枝垂梅一輪開く枝の先


平成14年2月の句

四つ五つ寄生木付いて枯欅

寒鯉を底に潜ませ平瀬川

春立つや紅淡き明けの空

梅林に来て明日からの梅まつり

枝垂梅汀女の句碑のどっしりと

新造の墓地東向き春隣

遠き山富士を帽子に雪を着て

北国の兄へ返書や冴返る

うららかや島を俯瞰すレンズ雲


平成14年3月の句

ひと年の眠りより覚め内裏雛

真綿もて目隠しをして雛しまふ

木蓮のふくれし蕾ひもとけて

高々と瀬戸大橋や春の潮

もてなしの抹茶の香り春の旅

湖に光るさざなみ山笑ふ

爛漫の花をこぼして鳥隠る

眠る子の夢は何色花の下

堰を落つる水のひびきや夕桜


平成14年4月の句

水温む鮠も出で来よ中津川

春暁の夢か現か触るる手は

孫生るるエリカの花の盛りにて

花びらの流るる空や古戦場

昼蛙ホトケドゼウの棲める池

虎杖の太きを四本摘みにけり

石楠花の後ろ楯とて竹さやぐ

新緑の日々新たなる欅かな

亀鳴くや証人喚問猿芝居


平成14年5月の句

風薫るのぼり祭りの幡幟

花落ちて緑したたる櫟かな

夜明けともニセアカシアの明かりとも

流れ香の元を求めて朴の花

初夏の瀬に婚姻の鯉盛り上がる

青き香を風に流して栗の花

紫陽花の浅き緑に咲き初めて

緑陰に集ふ友垣古き酒

玖瑰や波のリズムに日の落ちて


平成14年6月の句

緑陰やこれより流れ暗渠なる

青梅の落ちし香りを拾ひけり

紫陽花の触れよとばかり寺の道

走り梅雨一夜仮寝の観音堂

よもすがら灯ともす堂や遠蛙

山頂に盛るつつじを一人占め

渓流や河鹿の声のかすかなる

菖蒲田の風に憩へる二人連れ

獻燈に亡父の名あり青田風


平成14年7月の句

弓なりの海岸線や夏来たる

ねむり木の花傘天に拡がれる

辿り着く尾根に涼風ありにけり

雲切れてぬっと頂上登山道

塩焼の地鮎小ぶりや旅の宿

のうぜんの盛る色香に歩を止むる

黄昏れて花ほどけたり烏瓜

車窓かな畔くねり飛ぶ青田原

かなかなや街道筋の明け初むる


平成14年8月の句

まだ灼けぬ朝駆けの道夾竹桃

子の見えて蝉のじりりと移動する

熊蝉のひと鳴き聞きし現かな

逝く人や通夜の帰りの遠花火

時めきし議員辞職す夏の果

秋立つや丹沢山塊富士載せて

群れ遊ぶ小鴨と鯉と風雨去る

台風過柿の小さき実散り敷いて

わが影を出穂へ落とせば威し銃


平成14年9月の句

登山者の昼の憩ひやハーモニカ

山道のほとほと長し草虱

求めたる志野のぐい呑み秋の旅

双曲の高圧線や秋の雲

天高しポプラ一葉落ちにけり

飛び火して狭庭に燃ゆる曼珠沙華

参道の横にお地蔵彼岸花

邯鄲やそぞろに歩む夜の道

木犀の香のしのび来る読書かな


平成14年10月の句

川波に釣り竿光る薄かな

四角地を泡立草の占拠して

松茸の香り溶け込む温め酒

ふるさとの山の姿や草紅葉

刈田道鳥海夕姿ありにけり

蝗めの何故に車道へ跳び出づる

ひといろの黄菊に小虻点々と

切株の年輪数ふ暮の秋

晩秋や鳶が主の大欅


平成14年11月の句

刈田原秩父連山明け初むる

朝まだき都幾の川面の狭霧かな

遠望の森は文殊寺比企の秋

声かけて共に歩めり菊の道

王禅寺小粒甘柿禅寺丸

暮れ残る銀杏黄葉や長安寺

鈴つけしリュックの人と秋を行く

乳母車も共にマーチや秋桜

時雨れきて大河加古川海に入る


平成14年12月の句

冴え渡る秩父奥多摩はるけくも

初雪や目覚めて白きガラス窓

雪嶺の上なほ白き富士の嶺

箱根山登るほどに雪深み行く

頂上や雪差し入れて洋酒飲む

冬山の杉の下道日の射して

大山の見守る里や冬はじめ

多摩川の土手の昼餉や温め酒

冬麗やビル暮れ初むるシオサイト