同人シンデレラ

第4夜

その夜、ハルおばさんは胸騒ぎがして深夜に目を覚ましました。
前日から降り続いた雨はふりやんでいません。
「明日は舞踏会の日なのに雨だなんて珍しいわね。」
そのときハルおばさんは玄関での異変に気づきました。

シンデレラはなぜそこにいたのか覚えていません。
気づいたときには暖炉の前で、毛布に包まっていました。
「あら、気づいたのね。」
それはハルおばさんの声でした。
「あなたが、靴も履かずにずぶ濡れで玄関の前に倒れてるのを見たときは、 心臓が飛び出すくらいびっくりしたわ。」
どうやら、裸足で家を飛び出した後、ハルおばさんの家の前で倒れて、 介抱してもらったようです。
シンデレラはさっきあったことをハルおばさんに話しました。

シンデレラの話を聞くと、ハルおばさんは険しい表情になりました。
「それで、シンデレラはどうして舞踏会に行きたいの?」
それはシンデレラにとって、実は考えたこともないことでした。
『自分はどうして舞踏会に行きたいのか』
そのことを考えるとシンデレラは頭の中が真っ白になりました。
「たぶん、お継母さんやお義姉さんが行っているからじゃないかしら?」
図星でした。
「私は、むしろ、舞踏会に連れて行ってもらえなくてよかったと思ってます。
もしあなたがお継母さんに連れられていったら、 あなたを騙したお義姉さんのような人達の輪に入れられて、 あなたの持つ優しさや繊細さが失われてしまったことでしょう。
でも、舞踏会には行っておくべきだと思います。」
「どうしてですか?」
「舞踏会はその時代、その時代に輝いた作品に感化された人達が、 その想いを極限まで自己表現する場です。
そのセンスに触れるのはとても素晴らしいことです。
それにあなたが今まで呼んできた同人誌は、 舞踏会と併設されたバザー会場で売られているのよ。」
シンデレラの目が一瞬輝きました。

「舞踏会は諸刃の剣です。
それでも、もしあなたがどうしても行きたいのであれば、 入場券は私が用意します。
決めなさい、シンデレラ。」
「でも、私、服が濡れてて・・・、家にあるのもボロボロで・・・」
「そういう話じゃないの。行きたいか、行きたくないか。」
「行きたい・・・です」
ハルおばさんはにこやかな表情になりました。
「それだけ聞ければ十分。あとはおばさんにまかせてちょうだい。」

ハルおばさんは奥の部屋に引っ込み、洋服をもって戻ってきました。
「こんなこともあると思って、用意しておいたの。
舞踏会にはコレを着ていきなさい。」
その制服は黒いシャツ、黒いスカート、 黄色地に灰色のクロス柄の入ったチョッキの組み合わせでした。
「この制服は魔法の制服なの。
これさえ着れば、 派手なドレスやきらびやかな宝石なんて目じゃないわ。
舞踏会での人気者ナンバー1は間違いなしよ。」
ハルおばさんは胸を張っていいました。
しかし、シンデレラがあまりに期待に満ちた目で制服をみつめるので、
「冗談よ。本当は私が学生のときに着ていた制服なの。」
と本当のことをバラしてしまいました。
シンデレラはちょっとがっかりしました。
「でも、人気者ナンバー1は嘘にはならないと思うわ。ふふふ。」
シンデレラは、ハルおばさんのすることだから、 何か凄い理由があるのだろうとは思いましたが、 その時点ではただのちょっとくだびれた感のある制服にしか見えませんでした。




シンデレラはハルおばさんが用意した制服に着替えました。
制服はスカートがやや短くて、袖が若干長いことを除けばぴったりのサイズでした。
「よかったわ。裾も袖もぴったりね。」
「???」
「その服のそれでいいのよ。ふふふ。」

そのとき、玄関を叩く音がしました。
「あら、もうそんな時間?」
「オーナー、おはようございます。」
イケメンな2人の男性が挨拶して部屋に入ってきました。。
「ハヤト君、加賀君、おはようございます。
いつも時間通りで感心ね。」
2人の男性はどちらも髪の毛をつんつんに逆立てていましたが、 ハヤトと呼ばれた男性は真っ黒い髪で優しそうな雰囲気、 加賀と呼ばれた男性は緑色の髪に黄色いメッシュが入っていて野性的な雰囲気した。
「新刊は離れの倉庫においてあるから、いつもの通りに運んでちょうだい。
それから、ついでと言ってはなんだけど、もう一つ頼まれて欲しいの。」

第5夜へ続く  |  目次に戻る