同人シンデレラ

第5夜

舞踏会の日の朝がきました。。
朝日を浴びながら、ハヤト、加賀、 シンデレラを乗せた高速輸送車「アスラーダ」は常北高速道を疾走しています。

運転手はハヤト、運転席の後ろにシンデレラ、その隣に加賀が乗っています。
舞踏会が行われるお城につくのは2時間後の予定です。
シンデレラは出発前にハルおばさんとした約束を思い出していました。

「シンデレラ、これからお城の舞踏会に行くにあたって、守ってもらうことが3つあります。
1つ、自分の素性は秘密にすること。
2つ、目上の男性は『お兄ちゃん』と呼ぶこと。
3つ、14時までには会場を出ること。
この約束を1つでも破ったら二度と舞踏会には行けないと思ってください。」

しばらくして、急に疲れが現れたのか、シンデレラは眠ってしまいました。
「ところでハヤト。このコとオーナーってどういう関係だと思う?」
「オーナーは知り合いの娘さんと言ってましたから、そういうことでしょ。」
「そうじゃなくて、何か秘密があるんじゃないか?
例えば、似てないけど隠し子とか。」
「加賀さん…、僕達はプロの運び屋なんだから、依頼人の素性を必要以上に勘ぐるのはよくないですよ。」
「そうは言ってもなぁ。あのオーナーがよっぽど気に入ってるなんて滅多にないぜ。
お前、本当に気にならないのか?」
「まあ正直、気にならないと言ったら嘘になりますけど…」
「だろー」
「でも、それだけ大事なコをあずけてくれたんだから、まずはその期待に応えるのが最優先でしょ。
わかってると思いますけど…
「わーってる。オーナーからあずかったコに手なんかださないよ。」




午前8時30分。
シンデレラ達の搭乗したアスラーダはお城の搬入ゲートを通過しました。
そこでシンデレラと加賀はアスラーダを降りました。
「じゃあ僕は荷物を届けてきますから。それと加賀さん。」
ハヤトは加賀を手招きして小さな声で言いました。
「いいですね、オーナーからあずかったコですからね。」
「いちいち念を押さなくてもわーってるよ。」

ハヤトは多少の不安を残しながらアスラーダを駐車場に向わせました。
「それじゃあ、会場の方に行こうか。」
シンデレラは加賀に案内されて舞踏会の会場に向かいました。

舞踏会の会場前では大規模な同人誌即売会が開かれていました。
シンデレラはもの珍しそうに辺りを見回しました。
「おや、バザーに来るのは初めて?」
「はい、おば様から話には聞いてましたけど…。
でも凄い! おば様の書斎にあるのより何倍も本がいっぱい。」
『そりゃそうだよ。』と加賀は内心思いましたが、 その初々しさに圧倒されて言葉になりませんでした。

その隙にシンデレラは同人誌に吸い寄せられるようにブースの方に歩きだしました。
「ちょっちょっちょっと待った!!」
加賀はあわてて止めに入りました。
「どうかしたんですか?」
「いや、なんというか、この辺りは男性向け創作で・・・、 一言でいうと女の子が入っちゃいけないいところなんだ。」
「あの、ごめんなさい。私、そういうの知らなくて・・・。」
「いや、多分、人類の9割以上の女性は知らないまま生きてることだから、気にしなくてもいいんだ。
それより、女の子向けのブースはあっちだから、ちょっと行ってみよう。」

シンデレラは加賀に案内されて女性向け創作エリアに来ました。
「うわぁ、こっちにも本がいっぱい。」
女性向け創作ブースは臭覚以外の全ての5感で男性向けを凌駕する勢いです。
シンデレラは、最初は喜んでいましたが突然静かになりました。
加賀がたずねると、
「お金持ってないから買えないです…」
「迷惑じゃなきゃ、おごるよ。」
「でも、おば様との約束の時間もあるし」
二人の眼前には最後尾がわからない程の長蛇の列が連なっていました。
加賀はうなづき、シンデレラを連れて西の塔の大広間に向かいました。

第6夜へ続く  |  目次に戻る