同人シンデレラ

第6夜

西の塔の長い長い階段を上ったところにある舞踏会の会場前に シンデレラと加賀は辿り着きました。
会場はすでに人だかりができていて、きらびやかな衣装、 奇抜な衣装、放送コードぎりぎりの衣装に身を包んだ人たちが 西方浄土か桃源郷かと思わせるほどの異空間を作り出していました。
シンデレラはあまりの異様な光景に、ゴールを目前にして足がすくんでしまいました。

「シンデレラ、俺の役目はここまでだ。
約束の時間まで、楽しんできてくれ。」
加賀はシンデレラの背中を強く押しました。
「行ってこい、グーデリアン。」
「グーデリアンって、誰!?」
という突っ込みを入れる間もなく、 シンデレラはコスプレイヤーの荒波に飲み込まれてしまいました。

「ハヤト、約束通りにオーナーからあずかった子には手を出さず、 ちゃんと会場まで送り届けだぜ。
だから俺はこれから別の女の子と楽しい時間を過ごすから、時間まで売り子はまかせたぞ。」
加賀は心の中でそうつぶやいて、シンデレラとは逆の人波に消えて行きました。

残されたシンデレラは人波に飲まれてふらふらと右往左往しました。
そのとき、いままでよりもさらに強い人波がシンデレラを直撃しました。
シンデレラは体を支えきれず、近くにいた男性の胸板に倒れこんでしまいました。
「ご、ごめんなさい、」
そのとき、突然ハルおばさんとの約束が頭をよぎりました。

>2つ、目上の男性は『お兄ちゃん』と呼ぶこと。

「ごめんなさい・・・、お兄ちゃん。」

その男性は瞬間湯沸かし器のように一瞬で赤面しました。
「ちょっと、私達の王子にちょっかい出すつもり!?」
「そうよ、あなた新顔ね。ちょっと大胆なんじゃいの!?」
「生意気よ、あんた!!」
王子と呼ばれた男性には数人の女性の取り巻きがついていました。。
シンデレラが困っていると、王子と呼ばれた男性が間に割って入りました。
「君達、彼女もわざとじゃないみたいだし、もう許してやってくれないか。」
取り巻き達はしぶしぶと黙りました。

「ところで可憐ちゃん、よかったら僕と踊ってくれませんか?」
シンデレラはきょとんとしてしまいましたが、 王子のペースに乗せられていっしょに踊ることになりました。

王子姿のイケメンと清楚な制服の女子学生のダンスは、 すぐにカメラ小僧の目を引きました。
「か、可憐だ!!
「本当だ、可憐ちゃんだ!!」
「も、萌えーーーー!!」
パシャ!パシャ!
「よかったら、メアドの交換」
「ばか、押すなよ!!」
パシャ!パシャ!パシャ!
「すいません、こっちに目線ください!!」
パシャ!パシャ!パシャ!パシャ!パシャ!パシャ!




その頃、シンデレラの義母と義姉が午前中に目ぼしい同人誌の購入を済まして 舞踏会の会場に現れました。
「今日は何か、いつもより騒がしいわね。」
「また更衣室の壁が倒れたのかしら。」
「それってもちろん男子更衣室よね(笑)」
などと、勝手な想像をしていましたが、よく見ると、 踊っているカップルを中心にカメラ小僧とコギャルがドーナツ状に人垣を作っていました。
しかも、中心で踊っているカップルは、 本人はお忍びのつもりだろうけど誰もが皆知っているこの国のヲタク王子と、 可憐ちゃんのコスプレをした見知らぬ女の子でした。

義母は焦りました。
今年こそ、娘達を王子と親しい間柄にして、 自分は皇族として遊んで暮らす計画が足元から崩れ落ちるような感覚に襲われました。
義母は娘達を従えて人垣を蹴散らし、王子に声をかけました。
義母達を見たシンデレラは心臓が止まるかと思うほどびっくりしましたが、 幸い義母達はシンデレラの正体に気づいていないようです。

「すまないが、少々休みを取りたい。」
王子はダンスの誘いをにべもなく断ると、 シンデレラの手を取ってそそくさとその場を後にしました。

第7夜へ続く  |  目次に戻る