ユーモアもの
ここは、ユーモアやスラップスティックな笑いが面白いものを紹介するページ。
ここでは(面倒なので)とりあげていませんが、ザンスシリーズ、スペルシンガーシリーズ、マジカルランドシリーズなど、ハヤカワのラインナップの中でも充実しており、、エピックものと並んで安定した売上を誇る主力級なんだろうなと邪推する今日この頃。どれも面白いですが、紹介するのはなんか手間、というか全部図書館で借りて読んだので、手元にないんで今はできません。うーん、へぼ推薦者。
「疾風魔法大作戦」 (トム・ホルト著 古沢嘉通訳 ハヤカワFT文庫)
一言で言います。モンティ・パイソンのシチュエーション・コメディの傑作みたいです。つまる所、それが分かる方は一発で「買い」です。
ひょんな事から現代に蘇ったヴァイキングの一団。彼らを目覚めさせてしまった考古学者ヒルディの助力を得て、彼らは、現代に蘇った目的、すなわち彼らの宿敵たる邪悪な魔法使いの世界征服を打破せんと試みる。
粗筋はこうで一応間違いはないと思いますが、そういう話ではなくて、エッダ、サガの伝説の主人公そのままの彼らが、現代でいかに厄介事にはまらぬようにして目的を遂げるか、というのを差配するヒルディの苦労や如何に? といった方が近いかもしれません。
イギリスのコメディでは、こういうシチュエーションを想定したらどうなるか、という細かい舞台設定つきのやつがよくあります。もしもイヴァン雷帝が、セールスマンだったら、などといった、二つの全く異なる要素を組み合わせたシチュエーションを楽しむわけです。日本のコメディでも「もしも○○が・・・・・・だったら」というようなものは幾つかありますよね。これはまさにそれです。
不味い不味いと言いながら焦げたカモメを食うちょっぴり能天気な英雄たち。現代にも適応する深い洞察力と、部下に対する限りない忍耐とユーモア精神を併せ持つ偉大な王。彼らをとりあえず人目につかないようするのにおおわらわなヒルディ。彼らをTVのネタとして追いかけて逆に捕まり、最後の最後で内に眠る? ヴァイキング魂を爆発させるTVディレクターのダニー。
対するは、現代の企業を秘密裏に掌握し、過去の阿呆どもめと王一行を待ち受ける、実はゲームが好きで子供っぽい所が抜けきれない魔法使い。彼の使い魔で、今は企業の重役たる苦労性の狼(信用度は0らしい)。
とにもかくにも、単純な駄洒落やギャグではなく、当人たちはいたって真面目なのに、それゆえに却って状況としてはとんでもなく大爆笑してしまう、というイギリスコメディ精神の精華とでも言うべき作品です。
設定の方も、単純に野蛮で遅れた過去と現代技術の対比、というのではなく、実は昔の方が「テクノロジー」が進んでいたりと、現代:過去の関係も色々と捻ってあり、ニヤリとさせられます。自分の持ち物だった装飾品が大英博物館に飾られているのを見て英雄の一人が憤慨するあたりなど大爆笑です。
とぼけた味わいと、現代イギリスも過去のヴァイキングの習俗もきっちり描ける重厚な筆力とが合わさった、いかにもイギリス、といった名作です。CGの表紙を見ただけでは内容がつかみづらいですが、ぜひどうぞ。
ヒルディ:「あれは彼の鬨(とき)の声?」
英雄の一人:「いいや。竜骨が足の上を踏んでいったんだ」
NOW WRITING 少々お待ち下さい