今を取り巻く出口の見えない苦悩の中、向かうべき先を示した一筋の光明。
だが、それは本当に向かうべき先だったのか。
闇を照らす光が、常に正しい方向を示すとは限らない。自分の向かう先が本当に正しいのか、誘蛾灯に誘われているだけなのか、答えは自分で出すしかなかった。
「最近会ってないよね、また、会いたいな」
もう何度目だろう。家に帰ると留守電が入っている。三月のあの日、会うべきなのか、会っていいのか、会ってどうするのか、何の結論も出せないまま、しかし足は自然に懐かしい道を進み、
そうして、彼女と再会した。
一目で彼女と分かった。あのころのままの街に、流れた年月だけ変化して、でも何も変わらない彼女。
彼女も気付いてくれた。大きくなったけど、でも何も変わっていないね、あのころのままだねと。
何かが変わる気がした。
あのころの輝きが、戻ってくるような気が。
それから幾日、幾週、幾月。休日が来るたび、彼女を訪ねる回数が増える。
長い夜汽車の切符のために、放課後はいつも働かなければならなかったけれど、その報酬は疲れを癒してあまりあった。
彼女に会うときだけ、彼女に会いに行くときだけ、彼女のことを考えるときだけは日々の苦痛を忘れることができたから。
彼女とともにいるとき、世界は輝きに満ち、優しく大人びた自分でいられた。そう、あのころのままの。
会いたいと願い、そう願ってくれる彼女が今の彼女なのか、あのころの彼女なのか、分からなくなっていた。
そんなことには、気付きもしなかった。
「最近会ってないよね、また、会いたいな」
ぼんやりとしたまま、テープが繰り返す彼女の言葉を聞いている。
「会いたい」
あの時の手紙に記された一言。
会った回数だけ留守電がささやく彼女の一言。
会いたかった。苦痛に彩られた日々から逃げ出したくて。
会いたい。今すぐにでも。彼女といるときだけ、苦痛から解放されるから。
けれど。
だから。
会いたく……ない。
学校。友人。家族。
内心に苦痛を抱えながら、出口のない日々を、結局そつなくこなしていた二年間。
そうして、彼女に会い、彼女と幸福なときをすごしたこの一年、 苦痛に喘ぎながらしがみついていた日常を手放した日々。
まるで彼女との幸せにバランスを取るかのように、日々の苦痛は倍加した。
それは今この時も増え続け、 彼女と会える時間は変わらない。
彼女なしではいられないけれど、 彼女と会う時間も苦痛になりつつあった。
彼女に会いに行かない週末が過ぎた。
苦痛は相変わらずだけれど、彼女に会った後ほどひどくない。
このままやっていけるのかもしれない、なんとなくそう思えた。
このまま、『今』のまま。
そして、次の朝。
通学路に、彼女がいた。
その後何が起きたのか、記憶は澱んだ霧の向こうに時折浮かぶ峰のようにあいまいな姿を見せている。
鈍い打撃音、甲高い悲鳴、もっと甲高いサイレンの叫び、赤い回転灯。
違う、赤いのは、赤いのは、自分と、そして。
何だったんだろう、あれは。