私たちは、日本の学問・文化の健全な発展を願う立場から、
国立大学の「大学法人化」をはじめとする最近の大学改革に
強い懸念を抱いています
小泉内閣は、「聖域なき構造改革」の名のもとに、国立大学の「構造改革」をも進めようとしています。もし、この方針を進めれば、国立大学は「大学法人」という半民営化の状態にされ、国民への負担が増すことはさけられません。また、日本の学問・文化の発展にとっても大きなマイナスになることも否めません。私たちは多くの国民の皆さんに、この「大学改革」なるものの内容を知っていただき、私たちと共に考えていただきたいと思います。
2001年6月、文部科学省は、産業競争力回復のための経済政策の一環として大学を利用するために「大学の構造改革の方針」(通称「遠山プラン」)を経済財政諮問会議に提出しました。その内容は、国立大学をスクラップ・アンド・ビルド方式で統廃合し、民間的経営手法を導入した新しい「大学法人」に移行させ、競争原理を導入した「トップ30」(現在は「21世紀COE」と改称)なる構想を打ち出したものでした。「トップ30」とは、それぞれの分野で優秀な30校を選び出して厚遇するという差別政策であり、学問・文化のいびつな発展につながると共に、国民にも受験競争をいっそうあおることになります。
そしてさらに、2002年3月に提出された調査検討会議の最終報告『新しい「国立大学法人像」について』では、各国立大学の「中期目標・計画」には文部科学大臣の承認を必要とするなどの、戦後つちかってきた学問の自由と大学の自治を無視した「法人像」とともに、「大学教職員の非公務員化」を打ち出しました。まさに大学と大学教職員を政治の意のままに使おうとするもので、学問・文化の健全な発展が危ぶまれます。
見過ごせない問題として、私立大学や公立大学にも文部科学大臣の認可する認証機関の評価を受けることを義務づけ、認証を受けられなかった大学には廃校措置もあり得るとする学校教育法改定が昨年秋すでに行われたことがあります。21世紀の日本という長期的な視野に立つとき、現在進められている「大学改革」のもたらす結果はまことに憂慮すべきものがあると言わざるを得ません。
大学の本来の役割は、人類の優れた学術的・思想的・文化的遺産を正しく受け継ぐとともに、それらを創造的に発展させて、新しい時代や社会の要請に積極的に応えることにあります。大学という公共的機関はこの二つの役割をはたすことによって、人類の発展に貢献してきたのです。したがって、もし大学が、特定の政権の恣意的な課題設定に振り回されるようなものになれば、大学はその役割を果すことができず、人類・社会の発展に寄与することができなくなります。
現在進行中の「大学改革」を、何もせずに許してしまえば、後世の人々から、私たちが日本の学問・文化の土台の破壊に手を貸した、と非難されるでしょう。
私たちは、一人でも多くの皆さんが、私たちが提案する以下の要求に、賛同をして下さることを呼びかけます。
1、政府は、現在開会中の通常国会に提出予定といわれる国立大学法人法案(仮称)の提出を取りやめ、今後の大学のあり方についてひろく国民的な議論を深めること
2、政府は、憲法第23条の「学問の自由」、および教育基本法第10条で規定されている「教育への不当な支配」からの自由を保障するとともに、「大学の自治」の下に行われる自主的な改革を尊重すること
3、政府は、大学に課せられている社会的責任を果すために、研究・教育条件を抜本的に改善し、また学生が教育を受ける権利を十分に保障すること
2003年1月28日
呼びかけ人
代表 池内 了(名古屋大学教授)
浅見輝男(茨城大学名誉教授)
井上ひさし(作家)
岩崎 稔(東京外国語大学助教授)
上田誠吉(弁護士)
小田 実(作家)
河井智康(海洋サイエンティスト)
小出昭一郎(元山梨大学学長)
辻下 徹(北海道大学教授)
鶴見俊輔(哲学者)
中村方子(中央大学名誉教授)
浜林正夫(一橋大学名誉教授)
山田洋次(映画監督)
湯浅精二(世界科学者連盟副会長)
弓削 達(元フェリス女学院大学学長)
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大学改革を考えるアピールの会 代表 池内 了
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